after 6〔新代社会の交通事故発生率と移動ラッシュ時の光景、と通学の諸事情〕
新代社会になってから交通事故の発生が著しく低下した。
まあ当然ちゃ当然だ。
――発生の根幹となる車が殆ど走っていないのだから。
但し最近は。
「通学マジでキツい……」
「ぁ、チエって電車通学だっけー?」
「今時乗り物って言ったら九割九分九厘そうだよ……」
ちな私は自転車通学ですけどね。
「本数が増えたっていっても結局母数を賄えてないから、永時の通勤通学ラッシュ……」
想像しただけでも地獄だな。
「なんかシュールな状況じゃん……」
「見た目は車両一杯に詰まった幼児の群れだからね」
本当に羊が追い込まれて帰る所みたいだ。
「でも今朝のトレンドは市営バスの再開だったよー」
それ私も見たな。
「分散してくれればいいけど……」
「チエはー?」
「わたしは電車のままかな」
当たり前だが、どういう訳かを追究する流れとなる。
「……車系は酔う」
電車も歴とした電動客車ですが。
「それはキチーね……」
そのチは使い方を間違ってるぞー。
――しかしながらだ。
「交通状況が改善されると、また事故の元だな」
「まーそれは仕方ないんじゃない。進歩には犠牲がつきものでしょ」
これは進歩なのか……?
「新代社会初の事故死とか歴史に載りそうじゃんか」
そんなリストには載せられたくねーよ。
「自家用車が普及する時に、全部自動にすればイイんじゃない?」
ぁーそれはアリかもしれない。
「無理っしょ、前のを乗れるようにするだけでも超高い改造費ってパパが言ってたしー」
「手動運転補助装置が最初から付いてるのを買えば、まだ安いでしょ」
てか改造は合法なのか?
「なら自動買うより、そっちにするっしょ」
確かに。
「と言うかまだ社用系の一部許可が出てる車しか公道を走っちゃ駄目なのに、何の為?」
「完全な私有地内は法外っしょ」
……――左様でございますか。
「ハッ、ボンクラめっ」
もはや金持ちでもない。
「相手パパだしっ!」
「……チッ。高等遊民にわたし達庶民の気持ちは分からないよ」
「パパは働いてるしッ!」
あと舌打ちしたな。ちな言うとしたら上級国民の方だと思う。
「……――ほんとチエは辛口っしょ」
戯れ言と思っているのなら、アンタも大したタマだよ。
「で――マセルはどゥー?」
「何の話だよ……」
こちとら金持ち喧嘩せずとはいかんのだよ。
「通学手段に決まってるじゃんー」
「……自転車。マヤカは?」
「アタチは徒歩」
ガタッ。自分を含む二人の椅子が音を立てる。
「ェ何……?」
馬鹿な、そんなコトあろうはずが。
「待って、マヤカの家って郊外でしょ」
「うん。だから朝は学校の近所まで送ってもらう」
……近所? というか。
「送ってもらう? 何で」
まさかヘリコプターか。
「パパの会社で働いてる従業員が配送車で迎えに来てくれりゅ」
さすがにヘリではなかったか。
「でも通学を理由に途中で降ろしたら、今は違反行為でしょ」
「途中じゃなくて、学校の近所に在る配送センターだから大丈夫ー」
そういえば入学した時期に見慣れない運送を見るようになったのは、ソレか。
「……、――ケッ!」
「なにソレ……?」
便乗して、私もやっておこう。
「――マセルも何ーっ」
来月からは子供用の乗車券も料金が見直されるってよ。
新代社会の交通事故発生率と移動ラッシュ時の光景、と通学の諸事情/了