after 2〔新代社会の噂と服とイジメと居酒屋の諸事情〕
とかく人類は知りたがり。
自分に関係のある話、無い話も――。
「アタチの従姉妹の友達が、同じ団地に住んでる一階の元おばちゃんから聞いた噂話なんだけどー、聞きたィー?」
――それはもう。
「真っ赤な他人ですら無いじゃんか、てか噂話でまとめて良くない?」
さっすがです。
「情報源って大事っしょ?」
「結局元が不明だし」
「……細かいコト気にしてたら将来老けるの早くなっても知らないよォ」
「当分は見向きもされないっつーの。むしろ早く成長してほしいくらい」
「ぇ、――何で?」
「着れる服が逐一許せない。親もわたしや弟の服をタンスから引っ張り出して着てるし、家族皆で同類の子供服なのも、見ていて気持ちが悪い……」
正直に言って、めっちゃ共感できる話だわ。
「でも最近は子供服の種類も数も増えて、ブッチャケそれしか売ってないっしょ?」
「……だからよ、子供用品って何であんなに高いの……? 面積との原価計算が割に合わないからって親は極力家の古着で済まそうって言ってる、……無くない?」
「うわァ、ソレは無いねェー」
「でしょ……」
共感し自然と頷いている私。
「マセルはどう思ゥー?」
いや、頷いてましたやん。
「……私は、下着の方が嫌かな」
ハッっと二人の表情が変わる。どうやら新しい燃料を投下してしまった様だ。
なので起承までは責任を取ろうと思う。
「上はそもそも無いから問題ないけど、下は露骨って言うか……よくあんな感じのはいてたなって思う……」
小刻みに頷く二人。ヨカッタ、共感は得られた。
「わたしは色味が無理、とにかく濃すぎる」
「ぇそうー? アタチはデザインの問題だと思ゥー」
どっちも分かる。が――。
「――私は狙ってる感じが……」
正しく三者三様。ただ根本となる問題を提示するとすれば。
「結局、大人になって感性が変わってたってコトかな……」
さすがッス。
「でもアタチは前から子供服は可愛いって思ってたよ? またお気に入りが着れるのも嬉ちいし」
「それはまた別の話でしょ。実際のところ、見て楽しむのと着るのは別件。目線が自分に近づくと選り好みするのはリアルに感じるからだと思うし」
「ああ……、それだとアタチの知り合いが聞いた話で、似た様なのあったよー」
一体此奴にはどれだけの見知らぬ知人が居るのか、友人七不思議の一つに認定しよう。
「――で、その子のクラス担任はずっとイジメを軽んじてたんだけど、自分が同じ目線に戻って現場を体験したら超怖くて、体格の差って言うのかな? 同じ身の上に置かれないと人って理解できてないんだなーって話」
「ふーん……ま、そうかもしれないね」
「ぁ、まさにチエのソレっしょ。自分には関係のない話って、思ったっしょ?」
「イヤそこまでは……」
「じゃあ今日の掃除当番手伝ってくれりゅ?」
「無理、予備校あるし」
「十分間に合うっしょッ」
「無駄に体力を使いたくない」
「親友の頼みを無駄って言った!」
「……わたし達って、そんなに親しかったっけ……?」
「この前と言ってる事が違うじゃんッ!」
「仕方ないでしょ、人間なんて明日にはノーって言える生物なんだし」
ぉ、哲学的ー。
「悟ったコト言うなしィー……、もういいや。マセル――」
「バイトあるから」
「――ハイ嘘、求人なんて全然無いっしょ」
「それがあったんだな」
「ぇ、……なんの仕事?」
「居酒屋です」
「超嘘、児童の飲酒は禁止されたままだし」
「元成人に関してはノンアルコール飲料とこどもの飲み物で、再開するんだってさ」
「……こどものって、アレそもそもジュースっしょ……」
「雰囲気じゃない?」
玄人になると烏龍茶でも酔えるらしいし。
「日々社会は復帰してるねー」
チエさん、まとめてくれて、ありがとう。
「アタチはオチてないしッ」
「ぉ、汚れにかけて?」
「かけてないチーッー!」
本日も、世の中はちょこまかと――せせこましい。
「ィーーッ!」
新代社会の噂と服とイジメと居酒屋の諸事情/了




