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12/12

after 12〔新代社会の諸事情〕

 いつの時代も空には変わりない太陽。

 そういえば、授業中に虫眼鏡で何かしら焼く奴が必ず一人は要るんだよな……。

 なんて手の平で遮る陽の光すらも青春の一ページにした幼い時を思い出す。


「ねぇねぇ見て見て、――浮き輪投げッ」


 そう言って何故かプールに浮かべていた輪の一つに向かい跳んで身を躍らせ飛び込む阿呆が盛大に水しぶきを上げる。


「――ッハ! どうっ? 入ってたッ?」


 まるでバカをあざ笑うように、立った波の流れが水上の輪を端へと流しポカンと空いた空間でこちらの反応を待つ友人を花弁みたいに飾り付けている。


「……ミリも入ってないし」


 てか入ったら何と言うつもりだ。


「そっかぁ……やっぱり押えておかないとダメかなぁ……」


 いったい最終的な目的は何なのか、を知りたい気持ちは――全く無く。

 プールの縁に座り足湯さながらに涼んでいる私、の隣で日傘とサングラスを着用する水着姿の不審者風な友人へと現実逃避する。


「……無理せず、室内(ナカ)に居ればいいのでは……?」

「ま、一応付き合いは大切にしてるつもり――だから」


 ふむ。

 しかしそう言う本人は出会った当初にズバッとした関係性を求めていた。と記憶しているのだが、ソレとの繋がりは無いのだろうか?


「……あのさ」

「――ん? 何」

「わたしってさ、不器用だと思うんだよね……」


 そうだろうか? むしろ誰よりも実体に生きていると思うが。


「もちろん素直に言ってるつもりなんだけどさ、言い方っていうか言葉の選び方が正直すぎるっていうか、ね……」


 ふむ。――で本題は、何を言いたいのかな。


「とにかく、その……、――アリガトね。――……友達になってくれて」


 おいおい。なにやってんだ、オジさんそういうのモエモエきゅんしちゃうよ。

 耳まで真っ赤にしてさ。


「――ねぇ、何やってんのー?」


 そこで空気を読まずに、イヤ逆に読んだのか。

 浮き輪に納まりプカプカと流れてきた新代社会の子ギャルが、幼馴染の方を見る。


「チエ大丈夫ぅー? なんか耳超真っ赤じゃん」

「……。――逝ね」

「ヒャバッ! ――ッツパアツ?」


 おー、見事にひっくり返ったな。


「ジャバッァ助けっ、ィ、ッ、――ゥー……」


 ぉ? なんかマジでヤバそうか……?

 そうこうしている内に波立勢いが幼児諸共ピタリと――沈む。


「ぇウソ、……マヤカ?」


 不安気に底を見つめ、今にも水の中へ倒れそうな角度で傾くチエ。

 と次の瞬間――海底より襲い来るB級モンスターと見まがう急襲で友人がプールに引き込まれて、日傘は宙を舞う。そのついでに――。


「ちょっマ」


 ――意図的かはさておき、落ち行くその手で掴まれ我が身もまた同じ末路を辿る事と也。


  …


 水面を漂う色とりどりの浮き輪が時折り視界の端を横ぎる。

 ゆらゆらと浮かぶ私達三人を照らすサンサンな太陽、が実に若かりし時の記憶をあぶり出し無駄な抵抗と成り果てた友人の漂流物(サングラス)が手に――当たった。


「やっぱりプールって最高だねー」


 要は水に浮かべたら何でも良かったってコトか。

 まあ地球の重力に引かれる肉体の負荷を多少なるとも緩和できるのであれば申し分ない。


「……――結局来た時点で、運命を避けては通れないってコトかな……」


 それってディスティニー?


「べつにイイじゃん、せっかく戻ったんだしィ楽しまなきゃ損っしょ。マセルも、そう思うっしょー?」


 果たして損得の問題なのだろうか。しかし――。


「――一理ある」

「そうっしょ、そうっしょ」


 なまらヤメれー。


「……――やっぱり、人類わたしたちって何にも変わらないんだね……」

「そんなの当たり前っしょ、皆中身は同じままだしー」


 最終的に元にも戻るしな。

 但し――。


「――でも今度こそは、大人に成れるかも、しれない」


 信じるか信じないかは。


「結局は、自分次第だね」


 そういうコトだ。


「じゃ、立派な大人になる為に、今日は徹底的に遊ぶしかないっしょッ」

「……不要なものは先に沈めておく」

「キャパッ?」


 ――はてさて、我らが人類はこの先どう変われるのか。見ものである。








  新代社会の諸事情/了

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