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11/12

after 11〔新代社会の将来は未来を見据える事が出来るのかと肌観点の諸事情〕

 夏休み某日――私達は電車に乗っていた。

 しかも貸切のグリーン車で。


「あ、見てっ――アレ富士山じゃないッ?」

「な訳ないでしょ、普通に何かしらの山だっつーの」


 というか行路からして遠ざかって行ってるでしょうよ。


「ェでも、アタチよりデカくない……?」

「――殴るか蹴るかは選んでいいよ」


 比較対象自身とか、脳内マウンテンな馬鹿だな。


「ヒャゥッ、マジで蹴るじゃん!」

「有り難く思いなさいよ」

「逆に感謝ッ?」


 ――とはいえ、だ。


「実際、小さくなって周りが大きく見えるのは事実」

「……――それは、まあね……」


 どうしたマヤカ、なんか吃驚した様な顔をしてないか?


「珍しいね。マセルがマヤカを援護するなんて」


 ああ――。


「――そんな気は毛頭ない。ただの、個人的な感想だ」

「それはそれで酷っしょ!」


 なんだヒドっしょって。また初めて聞いたわ。


「まーでも、実際本当だよね。わたし達って言うか、人類は外見程大人になってはなかったってコトかな……」


 本当言えてる。ある意味で現状が最も人類を体現している世界なのかもしれないと。


「で、さー。着いたらまず何するゥー?」


 コヤツにはとことん風流的な考えは馴染まんようだな。


「そりゃ地元観光でしょ」

「エー、超田舎だよー面白いとことか一個もないっしょ」


 だったらそんな所に私達を招待するなと言いたいが。


「じゃ何するのよ……」

「そんなの海で泳ぐっしょッ」


 ハ。


「水着持ってきてないし」


 そもそも聞いてないし。


「任せて、事前に二人の分も買って、準備もしてるからー」


 確信犯かよ。


「イヤ無理だし、一ミリも日焼けしたくない……」

「言い過ぎっしょッ、日常的に肌は焼けるっしょ!」


 焼きに行くのと焼かれるのではメンタル面の納得が違うのだよ坊や、否――お嬢ちゃん。


「でもさ……せっかく子供に戻ったし、イマ焼かないと後で焼けないじゃん……?」


 べつに焼く必要がないだろう。


「まぁ、言いたい事は分かるけど……」


 分かるんかい。


「そもそも何で、わたし達って平気で焼く事が出来てたんだろ?」

「子供だったからっしょ」

「なら、今は……?」

「焼いてイイっしょ」


 そういうコトではないだろ。と――。


「――未来を見据える事が出来ているから、かな」

「ミライ……、そうかもしれないね」


 ちなマヤカはいつも通りに“何が?”って面をしているが、それも分かった上でのマヤカしに過ぎない。


「て言うかぁ、嫌なら日焼け止めを使ったら、よくなーい?」

「予防なんてのはハシャギ過ぎたら帳消しでしょ」

「程々に遊びなよ……」


 まあ無いよりはマシ。


「――第一海で遊ぶ事を前提としてる時点で、論点もオカシクない?」

「ェ。……だって、海が在るんだよ……?」


 山みたいに言うな。


「絶対に泳ぐ必要はない」

「泳ぐっしょ! 海ってそれしか無いっしょ!」


 母なる海に謝れ。

 ――と、いずれにしろだ。


「結局のところ、人間ってまだまだ遊び足りない童心の大人ってコトか」

「言うてまだアタチ達は未成年だけどねー」


 それも言ってるうちに、間もなく終わる。


「ぁー早いわ大人、もっと準備期間があれば、後々焦らず楽に生きられるのにね」


 うんうん。


「……頷いてるけど、マセルは大人って言うかー、既に年寄りくさいっしょ」


 コイツは一度、分からせる必要があるな。


「ぁ! 見て見てっ、また富士山だよッ、ヒャゥッ!」


 社会は変わった。けれども人間とは最終的に自分の見たいモノを見たい様にしか見れない、不自由な生き物――なのかもしれない。








  新代社会の将来は未来を見据える事が出来るのかと肌観点の諸事情/了

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