絶対に負けさせたい主人公と絶対に勝ちたいヒロイン
学生とはどんな事があろうと、危機的状況を要する。
恋愛、スポーツ、受験など避けられない状況は絶対に1つある。俺は今、その内の1つの恋愛に危機的状況を要している。わいわい話している女子グループの真ん中の女子を見る。
その女子の名前は湯愛 凛。彼女と俺は幼馴染である。
しかし、高1の春休みに入る前に、俺は凛から「好きという感情が分かり、その人の事が好き」との報告を受けた。
告白を戸惑って出来ない自分がダメだったのだろう。これで、俺は恋愛による負けを認めた。
負けは負けで良かったんだ。当時の俺はそう認めた。しかし、高2になって同じクラスになった。
その時、俺の何かの歯車が動いて、そうだ、凛も俺と同じで負けてもらおうと。
俺はこの夏休み入るまでに凛の恋愛に勝負を付けなければならない。夏休みともなれば、デートなんやらの回が多数もあり、確実に負けるからだ。
まずは男を特定しなければならい。そろそろ昼休みになる時間だ。
凛が教室から出る。トイレ行くフリして着いていくか。
凛が立ち止まる。ここは3組の教室か?ここに好きな人がいるのか?
ちょっとずつ歩いて凛の行動を確認する。湯愛が呼ぶと女子が出てくる。
好きな人って女子か?有り得るかもしれないが、女子同士だと負けさせるビジョンが見えて来ない。
それだと、俺の完敗だ。偏見で男用しか作らなかった俺が悪いが、頼む、せめて男であってくれ。
凛は俺が見てるのを確認する。見られたか、トイレはもう目の前だし、入っとくか。
3分程度待ち、トイレから出ると湯愛の姿はもうなかった。そう思っていると、後ろから飛びつかれる。姿を確認すると、湯愛であった。
「驚いた?」
「いや、昔よくされたから別に」
「そっか」
あれ、凛がいるってことは好きな人の性別だけでも確認していいよな?それぐらいは、許されるよな。
「凛ってさ」
「うん?」
「好きな人の性別ってどっち?」
凛はこの世が止まったような長考の末、返事をする。
「それは男だよ」
「よっしゃ、ありがとう!」
「え?どういうこと?」
「いや、何でもない」
なら、それはチャンスである。俺の恋愛負けさせ作戦が決行できる!
凛とはクラスが一緒の為、歩くしかない。さて、どうやって勝ちヒロインになるのを阻止しようか。
ラブコメ作品にある負けヒロインの特徴を掴む為に、まずは本屋やSNSで調べるべきだな。
帰る時間となり、俺はまず本屋へ行く。負けヒロインがある作品の所へ行く。(今回は女が好きな男に別の女がでて負ける作品)
さて、ここから問題だな。負けヒロインを探すのは案外至難の技だな。
ある程度負けヒロインが出てこない作品もラブコメ作品には数多ある。
店員に聞いても……一部を除き分かるわけないよな。
一から調べるにはネットやSNSが必要だな。青髪ヒロインが出てる作品を少しだけ買っとくか。
青髪ヒロインは負けヒロインというレッテル貼られるのがよくある事と聞いたことあるし。
本屋から出て、家に帰り、スマホの通知が鳴る。開くと、公式からのメッセージと凛からのメッセージである。
『陽斗って好きなアニメキャラの髪型何色?』
ん?どういう事だ?好きなアニメキャラの色……髪に染める為の色か?まあ、本来好きな色は赤だが、青と送っておこう。
これで負けヒロインになる率はネットみてる感じだと、だいぶあがるだろう。
『ふうーん、青なんだ。わかった』
何をわかったのだろうか。まあ、いいや。負けヒロインの特徴がまだ青色の髪だけじゃ弱いよな?
また調べた所によると、幼馴染という属性も負けやすいのだが、これは俺以外適してないので除外だな。 スマホの通知が鳴る。
凛からの通知だ。画像が送られました?ノート写させてほしいなんて言ったかな?
通知をタップし、凛の画像を見る。これは自撮り。
髪を今編んでないので、少しだけ戸惑ったが、これは凛であるが、少し違う。
凛は黒髪から青髪へとなっている。俺は心の底から喜んだが、まだ始まったばかりである。
これは学校がまた楽しみで仕方がない。今日はラブコメ作品読みまくって負けヒロインの特徴もっと探すか。
――後日――
余りにも眠い。昨晩負けヒロインの特徴を見すぎたのもあるが、イラストが好みだった事もあったので、アニメもあったのでつい見てしまった。
「眠たそうだね」
「おお、髪色昨日画像送ったまんまなだな」
「う、うん」
髪をクルクルさせながら言う凛は、明らかに恋する乙女。凛は基本他人に興味をないのだが、凛を興味させる程の男ってある意味すごいな。
学校でも告白はされているが、キッパリと断っている。
会わないとなると、親戚とかに恋も有り得るな。長年分からなかった感情がようやく分かって、「恋」と分かったのだろう。
俺だって中学3年生までは分からなかった。しかし、凛と離れ離れになった。
正確には凛はクラスが離れても度々会いに来ていていた。俺はその時、何も感じていなかったが離れた瞬間に心に穴が空いたように感じだ。
俺は、自分はこれが好きなんだなと思った。凛はこちらをチラチラ見る。
「どうしたの?何か忘れた?」
「いや別に」
「そう」
また凛はこちらへ離れはしたが、すぐ近づいた。何の為の離れだったのだろうか。
凛はやっぱり数学のノート忘れたから後で見せて欲しいと言う。さっき言えば良かったのに。
そして、凛は願いを言う。
「今日、買い物に付き合ってほしいんだ」
それぐらいか。ボディーガードなら好きな人から頼めば、更に付き合えるのに、なぜ俺なんだよ。
まあ、負けさせるには俺の方が確かに有利だな。
「分かった、付き合おう」
「ありがとう」
凛は微笑む。そういうのって好きな人に見せる顔じゃないのか?俺にも見せていい顔なのだろうか?
「なあ、好きな人の特徴ってなんだ?」
凛は唇に手を当て、さあ?と言う。え〜好きな人の特徴ないの?1個はあるでしょ。
「じゃあ、食べ物!」
「食べ物か〜」
いや、それぐらいはあると思ったのがないのか?
うーん、これは言ってはいいのだろうか?どうやって好きになったかは無理かな?
「うーん、そうだなー、答えはまだ教えない」
どういう事だ?「まだ教えない」ってことは何れ俺に教えてくれるのか。
何故だ?俺に教える意味はあるのだろうか?あれか?負けの屈辱さをもっと味わせたいとかか?
「本当に教えてくれるのか?」
「もちろん」
凛はこちらの顔に近づき、にっこりと笑う。これは、本当に言ってくれそうだな。
好きになったけど、俺は負けたのを自覚しないとな。ウンウンと頷く俺である。
「ほんと、可愛いよな、湯愛さん」
「それな、何でアイツは好かれてんだろうな」
言っとくが、俺は好かれてない。負けていることを公にしたいぐらいだが、負けさせるまでは一応止めておこう。
「アイツら、あれで付き合ってないのか?」
「付き合ってるかも、しれんぞ、賭けてみるか?」
お前らも勝負してるんじゃない。俺と凛の勝負だけでいいんだよ。
後、何賭けようとしてんだよ。さてと、帰りの時間だし、凛の買い物に付き合うとするか。
校門前で凛は待っていた。凛はこちらに気が付き、手を振る
「ごめん。待たせて」
「いいよ、別に」
歩きながら、俺らは会話をする。
「本当に俺で良かったのか?」
「どういう事?」
「好きな人誘わなかったの?」
「用事があったみたいでね」
用事か。それは仕方ないか。けど、俺以外にはいなかったのだろうか?
「なあ、凛って俺以外に男友達っている?」
凛はビクリとする。あ、これはいないな。好きな人と友達にもなっていないのなら、俺の勝ちが濃厚か?
凛は急に俺の手を引っ張る。え?いいのだろうか。凛は驚いている俺に言う。
「私はどこかで嘘をついちゃったんだ」
え?嘘をついた?どこで一体。下手すれば、買い物自体が嘘だったのだろうか?
今の俺には考えても分からない。
「何故、俺に嘘を」
「それは私にも分からない」
何で本人が分からないんだよ。待てよ、これ好きな人がいるってのも嘘なのか?
凛はこちらを見て、何かを勘づいたのか言う。
「好きな人がいるのは嘘じゃない」
「そう、なら良かった」
「え?」
「あ、何でもない」
危うくバレるとこであった。勝負はまだまだこれからだが、早く好きな人を見つけたいもんだ。
凛との買い物が終わり、別れる。ベッドに横になり、俺は考える。
凛はどこかで嘘をついた。それを考えなければ。はあ、ここに来て、新たな選択肢を考えないといけないのか。
俺はこの時考えるのを放棄した。
――朝――
なぜか、余りスッキリしない寝起きであった。やっぱ、昨日の件が引っ張っているのだろうか。
学校に到着しても、凛は話して来なかった。だが、めんどくさい奴らは話してくるのだ。
「なあ、凛と付き合ってるのか?」
俺は首を横に振るのだが、まだ信じない事に、俺は溜息をつく。
凛とは勝負してるとは思われてないのか。
「いいか、俺と凛は勝負をしているのだ」
「なんだ?大富豪でもしてるのか?」
何故そうなった。大富豪なんて暫くしてないし、ましてや凛とは1度もやったことない。
「違うが、勝負は勝負だ」
「ほぉ、頑張れよ」
それは勝負に勝つことの応援だよな?恋とかの応援ではないだろうな?
凛はこちらを見るが、近づいてはこない。やっぱ好きな人がいるから、距離を置きたいから、あんな事言ったのかな。
段階は早いけど、ヒロイン戦争でも起こさせればいけるか?
青髪ヒロインや幼馴染ヒロインは追加ヒロインに負ける事もよくあるし。
また、俺は何もない時間がどのぐらい暇だったのか改めて実感した。
俺はこの時、なぜか凛に近づいた。
「凛、体調でも悪いのか?」
凛は今日、何か悲しさを見るような感じであった。もしかして、もう負けたのだろうか?
それなら、何もしなくていいのだが。
「もしかして、好きな人がもう付き合った?」
凛は首を横に振る。まだ、終わってないのか。なら、まだまだ勝負は続くな。
「凛、まだあの事引っ張ってるのか?」
凛はこちらへ振り向き、もう気がついたの?とか言う。俺は首を横に振って言った。
「全然」
凛は額に手を当て、そっかと言う。嘘なんてすぐに見抜けるわけないだろうに。
しかし、この春も早く終わりGWとなるだろう。
GWはさすがに妨害したいんだが、誘うのもな〜。あれ?そういやレンタル彼女高校生使えるっけ?
あ、使えなかった。18歳になっても高校生は使えないんかい!
仕方ない、こうなったら他校からレンタル彼女みたいにして借りてこよう!
友達が土曜日文化祭だから、来いよとか言っていたな。
メールをするか。
『なあ、お前の高校ってさ、レンタル彼女みたい店ない?』
既読がつき、返信が来た。
『お前、あるけど、何言ってん?』
『いやさ〜、負けさせたい人にレンタル彼女みたいなのを使って、見せたいんだよ』
『お前、変わってんなあ。一応うちの高校は問題が起きなければいいぞ』
『じゃあ、明日早速行くわ。そのレンカノみたいなやつってGW中の期間でも借りれます?』
『GW終了まではいいぞ』
俺は了解のスタンプを押して、スマホを閉じた。
けれど、レンカノ文化祭できるあいつの高校はなんてヤバい高校なんだ。私立でもないのに、よく許可おりたな。
ええと、レンタル彼女のやり方聞いておかないとな。
――――明日――――
△▼高校はここか。おお、賑わっている。ええと、教室用の文化祭では、サインがいるからサインしろと。なるほどな。
名前はレンタル彼女とは書いていないのか。ええと、ならどの部屋ががレンカノ部屋だ?
1Fはあちこち回ったし、3F行ってみるか。2Fは先生達のお墨付きが多いらしいから多分ないだろう。
城の展覧会、神武天皇を詳しく説明する会……ここの階、不思議な事に日本歴史しか置いてねぇ。
『レンカノ部屋はどこの階だ?』
『2Fだぜ!✧︎』
何で、先生のお墨付きを貰ってんだよ。階段をおりて、レンカノ部屋へ向かう。ようやく見つけた。どれどれ、店名は『あなたは絶対に借ります』。
なんでこんな強調してるんだ?まあ、まけさせる俺にとっちゃ別にいっか。
「すぃませーん」
「はい、どうしました?」
「ここってあれですか?レンカノ部屋ですか?」
担当者みたいな男子生徒は頷く。そして、3人の中から1人選んでと言われた。
レンカノ代はGW中に使うなら8万円、1日のみなら4万円。言っては悪いが、明らかに1日の方高すぎんか?
てか、なぜ女子はこれに協力したんだ?男子生徒に小声で、
「つかぬ事をお聞きしますが、これ許可もらってます?女子に」
「何言ってるんだ、当たり前だろ、世の中うるさいからな」
俺は安堵する。しかし一瞬思考回路が停止した。そして、戻ってきたことに感じたことは、いや高校生レンカノとか1番世の中にうるさいのでは?と。
だが、あえて突っ込まないことにした。
「GW中なら8万円でしたよね?」
「そうだぞ」
「では」
俺は5000円札16枚を手渡した。男子生徒は数えて、OKのサインを送る。
「あのー」
「ん?なんだ」
「負けヒロインにさせてくれそうな子いません?」
男子生徒は首を傾げ、どういう意味と聞いてくる。そのまんまの意味だと俺は突き返す。
男子生徒は、女子に聞くが、女子全員も首を傾げた。
うーむ、なら仕方ない。勝ちヒロインの特徴に近い人をレンカノにしよう。
……王道的なのは黒髪っぽい女子が多いよな。なら、右の女子だな。
「GW期間よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
――GW――
俺は今午前3時に最寄りの駅に来ている。周りから見たら不審者かもしれないが、全身黒だから多分職質はされないだろう。
凛に誰かと会う約束してるかを聞いたら、午前7時にしているという連絡が入った。
申し訳ないが、レンカノである結南さんにも来てもらうことにした。
多分LINEスタンプでゲロ吐いてるもの送ってきたから、相当朝は嫌だったらしいが仕方ない。
これも負けさせるために必要な手段なのだ。心の中で言っているうちに結南さんが来た。
「今日は何をすれば良いのでしょうか?」
「あ〜、とある女子の尾行さ」
彼女はスマホを取り出す。あ、待って。110番通報しないで。
激しく争い、何とか俺が止めることに勝った。
「ハアハア、じゃあ行こか」
結南さんに凛ついての説明をし、真の目的を言った。彼女は青ざめた目で俺を見る。
彼女を乱入させるという事なので、俺は別にどんな目で見られようがどうでも良かった。
「それで、私に8万円も払ったの?」
俺は頷く。どんな事であろうが、負けさせる為には手段を選ばないのが俺の主義である。
それにしても、凛、遅くないか?もう約束時間から30分近くは経っている。
「本当にモグモグ……現れ……るんですか?」
俺は後ろを振り返る。何食ってんだ、お前。それ、俺が買ってきた凛に負けさせる為のお菓子なんだが。
慌てて、説明した。彼女はどうやらお土産と勘違いしてたらしい。まあ、食われたのは凛の中ではあまり好きではないものだから良かったんだが。
「ご……」
「シーッ」
凛が現れた。いやもう1時間遅れなのに、誰か待ってるのは流石におかしくないか?
あの凛が1時間遅れもするはずがない。人の約束は必ず守るし、もし遅れたとしても15分程度だ。
「本当にあれ、人と会う約束なんですか?」
「分からない。まあ、相手側が1時間遅れの約束してたら現れるかもしれないし」
彼女は頷く。少しだけ結南さんに視線を向けていたら、凛が居なくなっていた。見失った!?
「あっれ、陽斗君!」
俺は後ろを振り返る。後ろにさっき居なくなっていた凛がいた。
いつの間に俺の後ろをとったんだ?
「陽斗君、そちらの女子は?」
「あ〜、俺の友達だった奴がカフェに居て、先にこの人送っといてくれない?と言われたんだ」
「ヘエー」
凛は完全に棒読みでの返答。これはまずいか?
「なら、一緒にカフェに行かない?」
「え?待ち合わせしてるんじゃなかったの?」
「待ち合わせ?ああ、それなら来れなくなったんだよ」
いや、これ答えていいやつかな?凛は、悲しそうな顔で言う。
結南さんも答えていいやつか戸惑っている。あんまり、悲しいことは言うなよ。言わなくていいんだからさ。
「じゃ、じゃあカフェ行く?」
凛も結南さんも頷く。一体、凛は何故、来れなくなったのにここに来たんだ?1時間遅れはもう無視してもいいだろうに。
「でさ、君名前誰?」
「早達結南です。」
「結南ちゃんね、私は湯愛 凛よろしくね」
すげぇ、こういう会話するの負けヒロイン感が否めなくて最高だわ。そう、凛はこういうのでいいんだよ。
会話している家にあっという間にカフェに着いた。
「わぁ〜懐かしい」
「何がだ?」
「一緒にここ来たこと覚えてる?」
凛と俺が一緒にカフェに来たことなんてあったけ?凛とは家で遊んだ事はあったはずだが、外はなかったような。
「何かの記憶違いじゃないか?」
「中2の時に1回だけ行ったでしょ?」
俺の記憶がない。凛との記憶はほとんど覚えているはずなんだが、ないのはやっぱり凛が作り出した記憶か?
凛はため息を吐く。
「中2の時、陽斗、反抗期だったから、親と喧嘩して、カフェに行ったんだよ」
「そんな時があったの?」
「うん」
凛は頷く。店員が来て、席へ招かれる。四人席で俺が座ると、2人が喧嘩し始める。
「なあ、お前ら、何やってんの?」
「「何でもない!!」」
明らかに喧嘩していると思うが、とりあえずほっといてメニュー表を見る事にした。
数分後、2人の喧嘩が終わり、凛が俺の隣の席へ座る。もしかして、隣の席で争っていたのか?
俺の隣に座らず、2人で座れば良かっただろ。仲を深める為にさ。
「さて、2人は注文どうする?」
「コーヒー」
「カフェラテ」
食べ物はどうするかは聞いたが、2人とも要らないらしい。ま、生活でも困る事はあるし、そうなる事も仕方ないか。
「結南さんって、ここから近いの?」
「そうだね、時計屋店が近くにあるんだ」
「逆方向だね、どうする?」
どうするって、何も結南さん次第です。本当は俺が送るべきだが、レンカノ状態であっても家は知られたくないだろう。
「お、お願いします」
「え?いいの?」
結南さんはメールを送ってきて、『レンカノ状態なんだから』と送ってきた。家に送る契約あったけ?辻褄合わせに言ったが、本当になるとは。
ん?凛はなぜか黙り込む。結南さんが席を立つと、凛が俺の耳元で囁く。
「好きだよ」
「え?」
凛は即座に体勢を立て直し、何もなかったように、帰ってきた結南さんに話しかける。
俺は混乱した。どういう事だ?間違いなく聞いた。「好きだよ」と。
好きな人と俺を勘違いしたのか?なら、話は合うが、いくら2人きりでの状況で、間違えるわけがない。
「あ、え〜と、大丈夫?」
「何がだ?」
「カフェから出た時からずぅと、上を見てるけど」
「え?あぁ、ごめん」
「別に謝らなくていいよ」
俺達は結南さんを家に送って、それぞれ家に帰った。ベッドに寝転がっても、凛の『好きだよ』が離れない。
は?あいつが好きな人は他にいるんじゃないのか?俺が好き?凛が?
それだと、俺がやってきたことは無意味なような……。
『なぁ、凛。好きな人って』
凛にメールを送るが、既読すらつかない。寝てるのだろうか?まあ、0時回ってるし、可能性もなくはないか。
体が誰かに揺らされてる気がする。
「起きなって」
「んぅ、今何時?」
「8時」
遅刻する!やばい!爆速で着替えて、学校へ向かう。普段は歩きだが、緊急事態だ。
自転車で爆速だ!!入れそうな瞬間に門が閉められた。
「残念だが、遅刻だ」
俺の無遅刻は今日で幕を閉じた。
「無遅刻が〜」
「まだ言ってるの?」
「いやだって……」
凛は急におにぎりを差し出してきた。ん?なんで、おにぎり?何故に?
「ご飯食べてないでしょ」
「え?ありがとう」
素直に嬉しい。ご飯食えないと思っていたから、いつものご飯よりも何故か美味しく感じた。
「ご馳走様。ありがとな、凛」
「!ど、どういたしまして」
凛は顔が少し赤くなり、すぐに席へ行ってしまった。一体、どこに赤くなる要素があったのだろうか?
俺も俺で未だに昨日の件を引きずっているからな。
ホームルームが終わり、帰ろうとしたら、凛に止められた。一緒に帰りたいと言われ、了承したのだが、どうやら委員会があるらしく、数十分待てと言われた。
そして、今俺はとても、これを後悔している。待たなければよかったと。
数十分後、凛が戻ってきた。
「本当に数十分待つとはな」
「ご、ごめんなさい」
そして、凛がまた俺の耳元で囁く。
「今度は勘違いさせない。好きだよ、陽斗。私と付き合って下さい」
「凛、まさか好きな人って?」
凛は頷く。凛が好きな人は俺だったのか。だが、それでも俺の答えはもう決まってる。
「ご、ごめん」
凛はその場で泣き崩れた。その時、俺の心が傷んだ。でも、負けヒロインの定義を破る訳にはいかない。青髪、幼馴染という属性を俺が生み出してしまったからには、断るもの以外の理由が見当たらない。
「最後に一言」
「一言?」
「今はこの答えだけど、凛が新たな姿に変わる時、俺も別の答えを出す」
凛は顔を上げ、俺の問いに答える。
「それは、本当?」
「本当だ」
そして、俺は好きな人に対して、負ける要素を作ったのだ。これは謝らなければならない。
「俺は謝らなければならない。ごめんなさい」
「どういう事?」
「後に理解してくれたら良い」
俺はお辞儀する。これからも仲良くやっていき、凛の本当の姿を見てから今の俺の答えを変えよう。
今のままでは、凛の負けだが、いつか凛が勝つ時もある。その時はその時で負けを認めよう。
そして、俺の答えも変えよう。
「まだまだ待っててね」
「ああ、待つ」
凛の願いで、手を握り、座り込んだ凛を引き上げた。また、戦おう。完全に戻るなら俺の負けだと認める、それ以外は絶対認めーーん!
加筆及び修正を行いました。