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「隙だらけやで」


 力を込めて放った一撃を完全に無効化されたことで態勢を崩したカーマインの背中目掛け、剣を突き立てる。

 同時に発動させるのは、闇の魔剣のアクティブスキルだ。


「カースソード」


「――ぐっ!?」


 胸の先から突き出される剣から噴き出すのは、黒色のオーラだ。

 粘質なスライムのようにカーマインの身体にひっついたオーラがその効果を発揮するために、イナリは一瞬のうちに背後に下がる。彼が通ったところを、コンマ数秒遅れる形でカーマインの血剣が抜けていった。


 吸精鬼の強力なところは、血を己の自らの一部とみなしてドレインタッチを使うことができる点にある。

 そのため彼が血の武器を出してしまった以上、ここから先イナリが剣によって傷つけられればそれだけカーマインの回復を許してしまうことになる。

 故に彼は可能な限り、全ての攻撃を食らわずに戦い続ける必要がある。


「が、あっ……」


 カーマインが全身をビクビクと震わせると、その全身に呪紋が浮かび上がる。

 見る者に怖気を覚えさせるその紋章は、イナリのアクティブスキルがしっかりと効いていることを示していた。


 魔剣のレベルが十に上がり覚えたこのスキルは、斬りつけた相手に対し呪いを付与するというもの。

 呪いはデバフではあるが、技術系統が魔法とは異なっているため、これを治すには時間経過を待つしかない。


 しばらくの間治すことができない代わりに効果がそれほど強くはないのだが、長期戦を覚悟しているイナリにとってはこの技は正しく生命線の一つであった。


「はああああああああっ!!」


 イナリは先ほどまでより勢いの弱くなったカーマインを、その速度と技術で圧倒してみせる。

 どこか剣舞のような美しさを感じさせる流れるような連閃は、カーマインの全身に深い傷跡を残していく。


 斬り下ろしによって吹っ飛んだカーマイン目掛けて、イナリが二本の魔剣を突き出す。


「これで……終わりやッ! プラズマショット、魔剣相克!」


 魔力を使って増幅した電撃を圧縮し、弾丸にして放つ対個人用スキルであるプラズマショット。

 これに合わせるのは相似の魔剣が持つもう一つの力、使う魔剣に対抗し打ち克とうとする魔剣相克。


 相似の魔剣によって生み出される電撃は、相反する性質を表現するためか漆黒に染まっていた。

 白と黒の雷撃は混ざり合いながら、互いに打ち克とうとする高めあっていく。

 そしてそれが極大まで増幅したところで、カーマインへと命中した。


 カーマインの服が、肉体が炭化していく。

 そしてイナリが放った一撃の余波で、屋敷が倒壊し始める。


「いよっと!」


 イナリは即座にローズを抱え、バキバキと音を立てて抜けようとする床から飛び上がった。 無事な屋根の上に乗りながら様子を観察する。


 カーマインはそのままガクッと意識を失い……そして全身が、黒色の光に包まれた。

 光が収まった時にそこには……


「ふふふ、まさか本当に倒されるとはね……ああ、この感覚は久しぶりだよ……」


 傷一つない身体で立っているカーマインの姿があった――。

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