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vsオーチャード 前編



「「GAUUUU!?」」


 頭上から突如として高熱のマグマを浴びせかけられたオーチャードは争いが止め、苦悶の声を上げながら大きく後ろに飛びずさった。


 だが絶対必中はそれでも尚オーチャードに追いすがり、全てのマグマをオーチャードへと命中させる。


 この世界における魔法は、魔力による超常現象の具現化である。

 そのため魔法の発動が終わり使用者の魔力を使いきった段階で、全ての魔法は可逆的に大気中にある魔力、マナに変換され取り込まれていく。


 魔法が終わりマグマが消え去ると、そこには身体から熱を発しているオーチャードの姿があった。


 全身が赤く変色しており、体毛はチリチリと燃えてほとんど丸裸に鳴っている状態だった。

 重い火傷を負っているからか、その鳴き声からは先ほどまでの元気がない。


 けれどどうやらその再生能力はかなり高いらしく、既に最初にマグマのかかった頭の部分は再生し始めていた。


 だがマグマで潰れた目が再生するより、二人が接敵する方がわずかに早かった。


「スラッシュ!」


 マクリーアが放ったのはアクティブスキルのスラッシュだ。

 これはイナリが使うファイアスラッシュと同系統の無属性版にあたる。


 アクティブスキルは魔力を消費して発動するのだが、スラッシュは発動までの出の速さと与えられるダメージ量のコスパが良く、冒険者達が最も愛用していると言っていいスキルである。


 マクリーアの放ったスラッシュが、餓狼オーチャードの火傷の上を強かに斬りつける。

 オーチャードの毛皮は高い耐性を持つが、マグマに焼け焦がされてしまった今は一撃は面白いほどあっさりとその肉体を傷つける。


「ううん、いいところまではいっとるんやけどいなぁ……ファイアスラスト!!」


 マクリーアに少し遅れる形で、イナリは先日の魔剣のレベルアップで新たに覚えたアクティブスキル、ファイアスラストを放つ。


 放つ突きの貫通力を上げるスラストの攻撃力を、炎によって更に上げたスキルである。

 彼の一撃は狙いを過たず、オーチャードの再生しかけている右目玉に突き立った。


 突きと同時に燃え上がる炎が、オーチャードの肉体を内側から焼いていく。

 けれど一撃が当たったイナリの顔は渋かった。


「いや、硬すぎるで、これっ!」


 イナリとしてはそのまま目玉を貫通し、脳を破壊して勝負を決めきるつもりだった。

 どれだけ再生能力が高くとも、脳を潰すことさえできれば魔物の肉体活動は止まるからだ。

 だが魔剣越しに返ってきた感触は、あまりにも硬質だった。

 目玉を壊した手応え感覚はあったのだが、その奥まで剣が入っていかないのだ。


「GARUU!!」


「ちいっ、しゃあないか!」


 再生が始まり目が見えるようになった左首のかみつき攻撃に、イナリは慌てて後ろに下がる。

 深くまで突き込んだ剣が取れそうもなかったので、一度還元してから再度出現させようとして……ふとイナリはあることを思い立ち、剣をそのままに戻すことにした。


「魔剣創造」


 続いて彼が生み出したのは二本目の魔剣である水の魔剣だ。

 こちらに飛びかかろうとするオーチャードを牽制するため、即座に魔力を込めて水を纏わせる。


「イビルショット!」


 もし外した場合に魔法攻撃力分のダメージを受けることと引き換えに大ダメージを与えることができる無属性魔法イビルショットが、吸い込まれるようにオーチャードへと着弾する。


 ミヤビは既にいくつもの魔法を覚えているが、その全てが彼女のスキルを最大限活かせるためのピーキーな性能のものばかりだった。


 未だレベルが十を過ぎたばかりにもかかわらず、ミヤビの魔法攻撃はオーチャードが無視できぬほどのダメージを与えることができている。


「「BAU!」」


 どうやらオーチャードは一番の脅威をミヤビと判断したらしく、鳴き声を上げながらミヤビの方へ駆け始める。そして実際、その判断は間違っていない。


 レベルにしては異常な火力を持っているミヤビではあるが、その耐久性はレベル相応。

 この中で最もレベルが低い後衛のため、オーチャードの一撃にも耐えられるかはかなり怪しいところだ。


 けれどミヤビを狙われるのは想定の範囲内。

 彼女へ向かおうとするオーチャード目掛けて、イナリは水の魔剣を振るった。


「させへんよ、わんころ!」


 水を鞭のようにしならせながら、性質を粘性に変える。

 そしてオーチャードの足下に向けて一撃を放ち、同時に部分的に形状変更を解いた。


 ここ一月ほど絶えず水の魔剣を使いこなす訓練をしていたおかげで、既にイナリは水の形状変更を自在に行うことができる。


 オーチャードの足下でパシャリと弾けた水が、べたりとオーチャードの足裏と地面をつける。

 精々がトリモチ程度の粘着力ではあるが、普段はないはずの抵抗を足裏に感じたオーチャードの動きがわずかに鈍る。

 そして仲間が生み出した隙を逃す間抜けは、この場には一人もいない。


「グランスラッシュ!」


「「GAAAAAAA!!」」


 注意をミヤビに向けていたオーチャードの死角をつくように、チャンスを窺っていたマクリーアの一撃が放つ。


 スラッシュの上位スキルであるグランスラッシュ。消費する魔力も多いが、その分だけ一撃の威力も高い、現在の彼女が放つことのできる最強の技だ。

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