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第86話(織田信房視点)

 そんな会話を交わした後、オスマン帝国との通商協定等の締結という手土産を持って、織田信房を団長とする使節団は日本に帰国することになった。


 尚、それ以外に日本人の仏教徒は、ジズヤ(人頭税)を支払うならば、オスマン帝国における「啓典の民」であるとも認められているし、対ポルトガル、スペイン戦争においては、日本とオスマン帝国はお互いに出来れば協力することも約束することになっていた。


 できることならば、正式な同盟関係を日本とオスマン帝国が締結するべきだ、という主張をする者も双方にいたのだが、そこまでの関係となると、宗教の違い等から、却って関係がこじれる基になりかねない、という主張が結果的には多数となり、正式な同盟関係を日本とオスマン帝国が締結するにまでは至らない、という結果になった。

 

 そして、日本本国を出発してから航路の時間や交渉の時間を併せた末に約1年を掛けて、日本本国まで織田信房らは帰国することになったが、その帰路において、それなりの対ポルトガル戦争のための様々な下工作を、羽柴秀吉やその部下である面々の強い主張もあり、織田信房らは行うことになった。


 朝廷や幕府の事前の了解が無い以上は、こういったことを行うのは、信房を団長とする日本の使節団の独断専行と言えば独断専行に他ならないが、何しろ時代的に通信手段等が限られており、更に準備の時間等もそれなり以上には掛かるという問題がある。

 それ故に羽柴秀吉らが、日本本国への帰国途中に予め下工作を行うべき、という主張を織田信房にしても抑えかねたのだ。


 だから、例えば、織田信房らはセイロン島のキャンディ王国の地に使節団を載せた艦隊を寄港させた際に、対ポルトガル領セイロンの戦争に、日本が踏み切った際には、キャンディ王国に物資等の提供をするように依頼することになった。


 これはキャンディ王国にとっても、渡りに船と言える事態だった。

 予てからポルトガルはセイロン島の植民地化を進めており、更にその過程において、積極的にセイロン島民のカトリックへの改宗をも求めていたのだ。


 これは上座部仏教を国教に事実上はしていたキャンディ王国にしてみれば、耐えかねる事態であり、宗派が上座部と大乗とで大きく違うとはいえ、同じ仏教徒の日本が、対ポルトガル戦争に踏み切るというのならば、正当な対価を支払うのならば、物資の提供を行うのはやぶさかではない、という態度を示すことになった。


 他にも、日本本国への帰国の路程において、武田家や上杉家、徳川家に対し、内々に対ポルトガル戦争を前提とするインド洋作戦の準備を依頼するようなことも、織田信房らは行うことになった。


 実際問題として、織田信房は従前から武田家と縁がある身だし、この世界では上杉家当主の上杉景勝は、足利幕府を介して、武田勝頼の妹である菊姫を正室に迎えていることから、回り回って、織田信房は上杉家とも縁がある身と言える。


 更に武田勝頼の嫡男の信勝の正室は、徳川信康の長女の福子であり、更に織田信房の姉の五徳の婿に徳川信康は成るという重縁がある。

 こういった縁を使った織田信房の依頼は、これまでの対ポルトガル戦争の経緯もあって、対インド洋作戦の準備をすることに、武田家や上杉家、徳川家が前向きになる事態を引き起こした。


 更にこうなると、東南アジアに勢力を伸ばしている日本の諸勢力、大名家の中でも有力な三家が、対ポルトガル戦争を前提とするインド洋作戦に前向きということになる以上、他の日本の諸勢力、大名家も織田信房の考えに賛同するという事態が引き起こされることになる。


 そういった下工作を行った上で、織田信房らは日本本国に帰国することになったのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 下手に同盟を結んでオスマンの使節が来日したら、神道に喧嘩を売ったり法華宗が喧嘩を売ってきたりと、同盟決裂どころか関係悪化にまっしぐらな気しかしないので同盟無しで少し安心。
[良い点]  オスマン帝国と言う分厚い側面支援国を得てインド洋からポルトガル勢力の駆逐へと舵を切り出した日本(^皿^;)まずはインド洋の真珠とも呼べる要地“セイロン島”の解放ですな、これまで主力だった…
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