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第72話

「次に北アメリカ大陸のこの辺りだが、ここまでスペインを始めとする欧州諸国は手を伸ばしていないようなのだ。それ故に先に我々(日本)が抑える必要がある」

 私は、(史実で言えば)カリフォルニア制圧の必要性を訴えた。


「手を伸ばしていない内に抑える必要があるとのことですが、理由を教えて頂けませぬか」

 そう榊原康政が私に尋ねた。


「極めて簡単なことだ。この辺りを迎えることは、スペインがマニラ周辺を迎えていたのと同じ、とまではいわないが、似たような事態を引き起こす。その影響が分からぬのか」

 私は敢えて上から目線の言葉を発し、その言葉を聞いた徳川家の面々は唸り声を挙げた。


 実際、私が考える程、カリフォルニア周辺は温帯気候であり、日本人にしてみれば、植民地化を行うのに好適な地としか、言いようが無い。


 細かいことを言えば、カリフォルニア周辺は日本本国と同じ温帯とはいえ、日本本国が温帯湿潤気候であるのに対して、カリフォルニア周辺は地中海性気候である以上は違う気候としか言いようが無い。

 

 だが、少なくとも温帯気候である日本からカリフォルニアへの植民活動は、それなり以上に植民者を生じさせる活動の筈だ。


 人間というか、人類の基本的な移住先希望は、同じ気温の土地が基本であり、古来から東西方向への移民は多発するが、南北方向への移民は少数である、と私は聞いた覚えがある。


 そういったことを類推する程、カリフォルニアは日本人が移民先として選ぶのには好適の地としか、言いようない筈なのだ。


「確かに、この辺りを抑えるのが、極めて重要なのは分かりましたが。スペインは、こういった植民地活動が行われることを警戒していないのでしょうか」

 酒井忠次が私に疑問の声を挙げた。 


「そもそも、こういった土地に誰が入植して、植民地を建設するのだ」

 それに対して、私は偽悪ぶって言った。

「成程」

 その言葉を聞いた酒井忠次は、すぐに悪い表情を浮かべ、その表情はすぐに周囲に広まった。


 実際問題として、普通に考えれば、カリフォルニア周辺に植民地を建設しよう等とする国が存在する筈が無いのだ。

 あるとすれば、それこそ日本しかないということになる。

 そして、日本はこれまで積極的に海外に侵出して、植民地を建設するようなことをしていなかった。


 こうした現実から考える程、カリフォルニア周辺を予め植民地化する必要がある、と考えて行動している等、スペインが行う筈が無いのだ。


 とはいえ、実際に日本が植民活動を、カリフォルニア周辺に行いだしては、すぐに現地の住民の噂から噂と言う情報伝達活動によって、メキシコにいるスペイン軍により、カリフォルニア周辺の日本の植民者は、文字通りに多数の命を失う事態が起きるだろう。

 こういった辺りを、自分が考えざるを得ない。


 更に言えば、自分の前世が、21世紀の日本の海上自衛官だったことも、自分を悩ませる一因になっている。

 私の前世では、日本は専守防衛政策を執っており、今の私が考えているような、積極的に海外に侵出することで、日本本国の安全を図るという考え、行動とは無縁だった。


 前世の自分は、それで本当にいいのか、むしろ、積極的に海外を攻撃すべきでは、という考えが時折に浮かんでいたのだが。

 今の立場になって、専守防衛政策にも、それなり以上の合理性があった、と考えてしまっている。


 本当に自国を防衛する必要がある以上、先制攻撃止む無しとか、敵国への攻撃は当然とか言われるが、実際にそんなことを言って相手を攻撃していては、相手も日本に対する攻撃を正当化し、周囲も日本に対する攻撃を当然視するようになりかねないのだ。


 本当にそんなにお互いに攻撃を正当視しあって良いのか。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 元がなし得なかったイタリア半島直撃迄突っ走って欲しいですね。
2024/03/31 11:11 通りすがり
[一言] >カリフォルニア制圧の必要性を訴えた ゴールドラッシュを連想しました。
[一言] まだ戦国大名が現役時代ですし、イケイケな発想になっても何も不思議ではないです。 というか、専守防衛なんて近代レベルのミサイルとかの超長距離攻撃兵器が使用可能だとか軍事大国の後ろ盾がないとでき…
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