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第67話

「それでは、後を頼む」

「お任せ下さい。兄上」

 結果的に1588年春に、私はフィリピンにある徳川領の統治を名目上は弟の秀康に任せて、日本本国に引き上げることになった。


 何故に名目上かというと、秀康は1574年生まれであり、数えの15歳に過ぎず、やっと元服したばかりなのである。

 それ故に石川数正や平岩親吉といった面々を秀康の補佐役として、私はフィリピンに残さざるを得なかった。


「本来から言えば、もう少しこの地に私は残りたかったが、義兄上の信忠殿からの命とあっては仕方がない。石川数正らの言葉をよく聞いて、この地を治めるのだ。それから上杉家や武田家を始めとする他の大名とは仲良くせよ」

「分かりました」

 私の言葉に対し、打てば響くように秀康は答えた。


 この頃のフィリピンだが、ルソン島を始めとする大半を徳川家が抑えつつあり、ミンダナオ島を始めとする一部を上杉家が抑えつつあった。

 とはいえ、実際のところは拠点を築き、点と線から面へと広げつつあるのが現実だった。

 更に言えば、こういった徳川家や上杉家の南進を見て、毛利家や島津家といった西国衆も南の新天地を目指そうとする動きを示しだしていた。


 だが、そうなると航海術に加えて、それなりの船を建造せざるを得ない事態となる。


 マニラを攻略した際に、自分達はマニラガレオン船の現物を確保すると共に、竜骨を据えたばかりといえる建造中のマニラガレオン船をも確保できた。

 又、言うまでもないが、ガレアス船も結果的に拿捕することに我々は成功していた。


 船大工というか、このマニラの地で船を建造している技術者の大半がスペイン人であり、当然にキリスト教徒である以上、その多くが殉教したのは大きな痛手だったが。

 そうは言っても、現物が手に入ったのは大きい。


 一部の棄教したスペイン人の協力も仰いで、何とか自分達は大型ガレオン船の建造技術を入手し、実際に建造することが出来るようになった。

 更に日本本国の面々にそれを公開して、日本本国各地で大型ガレオン船の建造が試みられるようになりつつあった。


 そして、大型ガレオン船の改良も試みられるようになりつつあった。

 これまでガレオン船には隔壁が無く、船体強度や浸水の際には問題を起こしがちだった。

 しかし、ジャンク船の隔壁を参考にして、ガレオン船に隔壁を備えるようにすることで、船体強度を高めて浸水に強い船に改良が図られるようになったのだ。


 但し、その代償として船自体が重くなり、機動性が低下するのは止むを得なかった。

 この辺りは、大砲を打ち合ったりする戦闘時のことを優先すべき、という割り切りしかなかった。


 ともかく、こうして大型ガレオン船を日本本国で建造できるようになったことで、日本各地の大名達は積極的に日本本国外に出ようとするようになっていた。

 最大で50門の大砲を搭載できる大型ガレオン船の建造が徐々に進んでいったことは、日本のシーパワーの増大をもたらしたのだ。


 その結果としてこの1588年時点で、ジョホール王国と日本が協力することで、ポルトガル領マラッカは失われていた。

 そして、マラッカを失ったことは、ほぼ必然的にポルトガル領マカオの立ち枯れを招いた。


 このように日本は東南アジアに侵出しており、私としてはもう少しフィリピンからインドネシア方面を日本の勢力圏に置く仕事に勤しみたかったのだが。

 義兄にして足利幕府管領の織田信忠殿から、至急、日本に帰国するようにとの命令が届いたのだ。


 何でも天正遣欧少年使節が乗っていたポルトガル船が、日本の軍船に拿捕されたことから、彼らの売国行為が分かったので、至急、話し合いたいとの連絡があったのだ。


 私は驚き、何があったと考えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  秀康さんが信康さんの後を受けてマニラの留守役なのはなんか安心(史実で家中において冷遇されていた中での信康さんとの交流や石川数正さんの息子の康勝さんが小姓として側に仕えていたとか海徳川との…
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