第56話
だが、自分でそこまでのことを言った以上、それこそ太平洋戦争開戦時の山本五十六連合艦隊司令長官では無いが、自分の言葉に責任を取らざるを得ない。
そして、元海上自衛官として、日本が負ける戦を開始する訳にはいかない。
最終的には日本が勝ち、スペイン、ポルトガルとの戦争に勝利し、この世界的な大戦争を日本の大勝利で終わらせるのだ、と私は固く決意することになった。
(とはいえ、私の本音ではそんなことは絶対に不可能だろう、と絶望したくなる事態だった)
私は史実の太平洋戦争時の南方作戦さえも、思い出せる限り思い出して作戦計画を立案した。
まずは、日本がマニラを攻略する必要がある。
日本がマニラを攻略し、そこでガレオン船を建造している技術者らを、日本は確保する必要がある。
それで、太平洋を横断できる大型ガレオン船建造の技術を、まずは日本は獲得するのだ。
マニラを日本軍が容易に攻略できるかだが。
私というか、日本が把握している情報によれば、マニラ(及びその近郊)にいるスペイン軍は、全ての陸海軍を合わせても約一千程の筈だ。
更に言えば、その7割がフィリピンで徴募したり、傭兵奴隷として買われたりした面々だとか。
日本とスペインの船の質の差には、私は一抹どころではない不安があるが、そうは言っても、ジャンク船の技術を(史実とは異なって)導入しているのが、この世界の日本だ。
だから、1万以上の兵を選りすぐって日本艦隊を編成してマニラに向ければ、マニラにいるスペイン艦隊は殲滅されて、更に陸兵の質の差も相まって、マニラは日本領になると私は考えた。
そして、次にマカオやマラッカ等のポルトガルの東アジア、東南アジアの拠点を征服する。
私の世界史知識が間違っていなければ、この当時のポルトガルの人口は約200万人もおらず、各拠点に展開している兵力は現地で雇った傭兵奴隷を併せても数百名規模の筈だ。
日本がポルトガルの各拠点に向けられる兵力は10万人以上に達する。
更に言えば、銃火器を始めとする装備の質は、日本とポルトガルでほぼ同等の筈だ。
兵員の質に至っては、何だかんだ言っても自発的に戦っている日本の足軽達に対し、奴隷となったことから、止む無く傭兵として戦っているポルトガルの現地兵の面々がどれだけ質が高いかというと。
私が考えれば考える程、10倍以上の兵の数の差から、東アジアや東南アジアにおいてはポルトガル軍の兵の多くが開戦前に逃亡して、日本軍の征服活動が容易に進む未来しか、垣間見えなかった。
だが、問題はその先だ。
それこそ史実の太平洋戦争で日本が兵を進めた東南アジア地域までは何とかなるだろう。
(もっとも、インドシナ、シャム、ミャンマーといった大陸部に、日本は手を出すつもりは無い。
それこそ沿岸部に交易及び防衛拠点を設けるだけに止めるつもりだ。
そんな大陸の奥地に派兵しては、とても採算が取れない話になる)
だが、それ以降、インド洋方面にはどうやって侵出して、ポルトガルを排除すべきだろうか。
前世で日本とオスマン帝国が同盟して、17世紀にインド洋において欧州諸国と戦うという小説を読んだ覚えがある。
そんな感じで、オスマン帝国と同盟して日本はインド洋に侵出を図るのが妥当な所だろう。
モルッカ諸島で産出される香辛料を独占して、紅海ルートのみで欧州に売り込みを掛けよう。
他にも中国の絹製品や陶磁器を紅海ルートで売り込むのだ。
インド洋交易からポルトガルを完全排除し、ポルトガルの国力を弱める一方、日本の富を大いに増大させていく。
それで、数十年単位で日本が戦争を継続できる体制を造るのだ。
というか、そういった長期不敗態勢を築かないとどうにもならない。
バカの一つ覚え、とフクロにされそうですが。
私なりに知恵を絞る限り、それこそ私の別作の「戦国に皇軍、来訪す」と似た作戦を展開するしか、この世界の日本では、対スペイン、ポルトガル戦争で勝利を収める手段が思いつきませんでした。
本当に無能な作者ですみません。
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