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第45話

 私の本音としては行きたくなかった江戸城だが、そうは言っても実際にこの地に住むことになると、私の内心の中で様々に込み上げるモノがあった。

 時代が時代のためか、自分の住む江戸城から富士山が、自分の覚えている未来の東京からの姿よりもクッキリと見える気がする。


 更に海に目を転じれば、目の前の内海、東京湾は太平洋に通じており、それこそ南北米大陸や豪州、インドやアフリカにまで至ることができるのだ。

 江戸の後背地といえる関東平野を開発して、太平洋に乗り出していけば、何処まで赴けるだろうか。

 僅かな間とはいえ、大日本帝国海軍の後継者といえる海上自衛隊士官だったためか、そんな想いまでも私の内心から吹き上げた。


 とはいえ、まずは足場固めを優先せざるを得ない。

 父からすれば莫逆の友といえる本多正信が私の付家老になったのは、父の様々な思惑が裏にあるのは私には自明の理だったが、本多正信が有能な人材なのは間違いない。

 使い潰すと言っては語弊があるが、それなりに本多正信を使って江戸を発展させ、又、私に任された南武蔵や相模の開発を進める必要がある。


 その一方で、私は小浜景隆他の面々を使って、江戸から石山を始めとする日本の国内航路、又、外国との航路の開拓を命じた。

 小浜景隆らは、これまでの私との付き合いから、私の命令の裏まですぐに読んでくれた。

「これは武田を始めとする東国の国衆等の懐柔の一環ですな」

 小浜景隆に至っては、私に明け透けに言ってきた。


「分かるか」

「分からぬ筈がありませんな」

「足利幕府は、朝廷再興をも旗印にして力を取り戻し、戦乱を終わらせようとしている。だが、戦で儲けて来た輩が、大人しくなると思うか」

「とても思えませんな。そもそも殿でさえ、武器を売って戦で儲けることを考える有様です」

「武田を始めとする東国の国衆等を、外に出させようと考えてな」

「具体的には」

「まずは、高山国(現在の台湾)を征服させてはどうか、と考えている。あそこならば、上手くやれば年3回も米が採れるというし、南に向かうのに絶好の拠点になるだろう。それに国といえる勢力もいないようだ。切り取り次第で武田家等は儲かるではないか」

「本当に悪い主君に私は仕えたようですな。暇乞いをして、私が高山国に行きたくなりました」

「何故に行くのだ」

「勿論、私が高山国に拠点を築いて儲けるためです」

「お前もいい勝負ではないか」

 しまいには、私と小浜景隆は笑い合って言い合うことになった。


 それはともかく、江戸を関東平野の物資を利根川水系を中心とする内陸水運と外洋との結節点にもして発展させるとなると、関東平野の内陸勢力との連携が重要になってくる。

 そうしたことから、私は本多正信を介し、武田勝頼らと連携することになった。


 武田勝頼にしても、本音では海へ出て、武田家を更に発展させたい。

 そのための一環として、下総の関宿を武田領に懸命にしたのだ。

 それこそ新たに鎌倉公方になった足利義氏が、武田家の主張に不快感を公然と訴えても、それでも譲らなかった程に執着した。


 さて、何故に関宿が武田家にとって重要視されたのか。

 それは関宿が、単体で1国の価値があると謳われる程の利根川水系の要地に、当時はなっていたことからだった。

 そのために古河公方や北条家等の諸勢力の角逐の場に長年になっていたのだ。

 関宿を制する者は、利根川水系を中心とする内陸水運を制する者となる。

 それが関東に住む者にとって常識と言え、そうしたことから武田勝頼は関宿を確保したのだ。


 そして、そういった背景があることから言っても私は武田勝頼と連携する必要があって、本多正信を介して躑躅ヶ崎館にいる武田勝頼を自ら訪問することにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつもお疲れ様です。 父家康と談判して連れてきた小浜景隆たち水軍衆、その目的は貿易や海上交易を見込んででしたか。元海自士官の信康、シーパワーの重要性は認識しているでしょうから。景隆とのやり…
[良い点]  史実では坂本龍馬ほどの規格外ですら黒船ショックを受けなければ広大な太平洋の先へと視線が向かう事の無かった日本人に現代視点を生まれ持った信康さんが自らその殻をぶち抜きそれに啓蒙されるように…
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