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第20話

 ともかく状況が急変したことに戸惑いつつ、私は声を挙げざるを得なかった。

「義父上は死んだが、織田家が滅んだのではない。ここ岐阜城を守り抜き、武田軍の攻撃を何としても跳ね返そうではないか」

「応、その通りよ」

 岐阜城に結果的に籠ることになった織田家(及び松平(徳川)家や水野家)の諸将を、岐阜城内で最大の広間にかき集めた上での会議を開き、私がそう発言するのに対して、(予め仕込んでおいたのだが)水野信元が発言すると、我も我もと言う感じで、その場にいる諸将は挙って賛同の声を挙げた。


「本来ならば、義兄上(織田信忠のこと)がこの岐阜城の軍勢を始めとする織田家の総指揮を執られるべきだが、この場に義兄上はおられぬ。それ故に不肖ながら私が指揮を執ろうと考えるが如何か」

「何を言われる。貴方様は信長殿の娘婿、更に信長殿も目を掛けられていた俊才にして、信長殿の仇まで討たれたのですぞ、取りあえずは織田軍全てを率いて当然」

 私の続けての発言に水野信元は呼応し、多くの織田家の武将までがそれに賛同する声を挙げた。


「それでは、そうさせてもらう」

 私は身にそぐわぬ立場になったと内心で考えつつ、この会議を終えた。


 さて、ここで裏話をさせてもらうと。

 長良川の畔での武田軍との戦において、水野信元は出来る限り後方に控えており、更に織田軍が退却を始めると、自らの軍勢と共に一目散に岐阜城に入城するという態度を示していた。

 それに私は難癖を付けたのだ。


「何故に武田軍と真面に戦わず、義父を見殺しにしたのか」

「いや、まさかこのようなことになるとは」

 石川数正と共に私は水野信元の下を訪れて詰問し、それに水野信元は答える事態が起きていた。


「武田に予め内通しておられ、幕府奉公衆に呼応する手筈になっていた、と我々が捕縛した幕府奉公衆の多くが申しています。まさか」

 石川数正が敢えてそこで言葉を切ると、水野信元は顔色を変えて弁明を始めた。

「心外極まる言い掛かり。私は織田家に忠誠を誓っております」


「では、織田家の為に働かれると」

「言うまでもないこと」

 石川数正と水野信元の話がそこまで進んだところで、私は口を挟んだ。

「それでは、私の明日の会議の発言に味方して下さいますか。それで、真偽を確認しましょう」

「発言内容によっては味方しましょう」

 水野信元は言ったが、態度等からすればバレバレだ。

 

 私と石川数正の言葉から、自分が武田信玄に内通していたと疑われていると水野信元は察した。

 更に言えば、水野信元の態度からすれば、信玄に裏で内通していた可能性が大だ。

 とはいえ、岐阜城に自らがいる以上、下手にそれを認めては自分の命が無い。

 だから、そんなことはない、とひたすら否定する態度を執り、私に味方すると言ったのだ。


 だが、これはこれで私にとっては好都合だ。

 水野信元という厳密に言えば織田家の武将ではない第三者が、私に積極的に味方して織田家の準当主に私を認める発言をすれば、織田家の武将はそれに反対する言葉を言いづらい。

 何しろそれを認めないならば、水野信元という同盟者から見捨てられる危険があるからだ。

 そして、私の義父の信長殿が亡くなった現実がある以上、織田家の武将は頼りになる存在を探しており、水野信元の発言を聞けば、織田家の武将の多くが私に味方するだろう。

 石川数正の助言もあって、私はそこまで考えて行動していたのだ。


 それはともかく、この会議の結果から、少なくとも岐阜城にいる織田家(及びその同盟者)の軍勢は当面の間は私の指揮下に入ることになった。

 私はこの現状を踏まえて、武田信玄との交渉を行うことにした。

 長良川畔の戦いがあったとはいえ、織田軍は未だに数では優勢なのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  うーん史実での不憫な最期に同情してた信元さんの如何にも戦国乱世を生きる武士そのもののふてぶてしさよ(^皿^;)信康さんにとって「父家康の真田昌幸•義父信長の松永久秀」並みに毒っ気の強い客…
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