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第120話

 そんな風に黄昏た気分に、思わず私が陥っていると。


「御祖父様、どうしたのですか」

 そう孫の蝶子が声を掛けて来た。

「うん、何時の間に来たのだ」

 蝶子は、確かフロリダ半島に住んでいる筈だが、何で私の傍にいるのだ。


「ボケないで下さい。従兄の信長と共に結婚の挨拶に来ました。手紙で知らせておいた筈です」

「おお、そうだった、そうだった」

 老眼だけのせいではなく、老人性白内障を患いつつあるせいか、私の目はかなり悪くなっている。


 それもあって、すぐには気が付かなかったのが。

 言われてみれば、蝶子の傍に孫の信長も立っている。


 あの父が亡くなったときの父の遺言と異母弟の秀忠の態度から、私は自分からは日本本国に残っている徳川家との縁を事実上は切ることにした。

 それもあって、家康や秀忠の字を、あの後に生まれた孫の名前には使わなくなった。

 その一方で、私は織田家、具体的には義父の織田信長への親しみを覚えるようになっていた。


 そうしたこともあって、私の男の初孫を信長と名付け、女の初孫を(帰蝶から)蝶子と名付けた。

 更に言えば、歳月の流れの中で、この従兄妹は愛を育んで結婚を決めたのだ。


「本当にせめて曾孫を連れて来るまで、元気でいて下さい」

 そう金髪で碧い目をした信長が、私に言って来る。

「そうですよ。御祖父様には元気でいて貰わないと」

 そう黒い肌をした蝶子も、従兄にして婚約者に味方して言ってきた。


 信長も蝶子も父方祖父は共に私になるが。

 それぞれの父は、日本人以外の、細かいことを言えば異人種、信長の父は白人と、蝶子の父は黒人と愛を育んで、それぞれが信長と蝶子という子に恵まれたのだ。


 こうしたことから、信長は金髪で碧い目を持つ一方で、蝶子は黒い肌の持ち主になったのだ。

 そして、信長と蝶子を眺めながら。


「そうだな。お前達が儂の曾孫を連れてくるまで元気でいないとな」

 そんな風に、少しでも元気が感じられるように答えを返しつつ、私は考えた。


 この世界の日本人は、この孫達のように、様々に混血していくのが当たり前になるのだろうな。

 実際に様々な(正式な結婚だけではなく、婚姻外の関係も含めて)男女関係から、人種を超えた子どもが多数、生まれるようになっている。

 そして、その子達が更に男女関係を持って、更なる人種を超えた子どもを産み育てるだろう。


 その果てに、この世界の日本人は、どのように考えられるようになるのだろうか。


 それこそ私の前世の21世紀のアメリカ合衆国の国民が、アメリカ(合衆国)人といえば様々な人種がいると、他の国の多くの人から考えられるように。

 この世界の日本人も、他の国の多くの人から、日本人は様々な人種がいると考えらえるようになるのではないだろうか。


 だが、その一方で、大きく違う点がある。

 この世界の日本人は、少なくとも現状では、私がそう動いたためなのもあるが、明確な人種差別が表面化していない。

 

 勿論、この世界でも日本国内では、キリスト教が禁教扱いされていて、歳月の流れから密やかに信仰するのは弾圧されなくなっているが、未だにキリスト教の教会は禁止されているように、宗教差別は健在だが。


 人種差別がないだけでも、遥かに良い世界になっている、と私は考えるべきだろう。


 そんな風に自分の考えに耽っていると、蝶子が私に声を掛けて来た。

「何か難しいことを考えていませんか」


「そんなに難しいことは考えていない。唯、お前達の将来が明るくなってほしい、と考えている」

 そう私が返すと、信長が笑いながら言った。

「私達の将来は明るいに決まっています。だって、皆が幸せになれますから」


「そうだな」

 そう明るく考えられる未来が私にも垣間見える。

 それで良いと私は考えよう。

 これで、本編は完結させます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 少し歯車が違っていたら、こんな感じにって思わせてくれて面白かったです。 歴史物が好きなので他の人のも書いてほしいです。
[一言] 折角なのでwikiも書こう!
[気になる点] 海外進出以降が蛇足。端的に言ってご都合主義の塊。 流石にオスマン帝国が何十年も騙されっぱなしだというならオスマン帝国をバカにしすぎだし、騙されたオスマン帝国やムスリムの聖職者達がダン…
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