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第108話

「こんな楽な戦争、喜んでやりたい代物ですな」

「全くだな」

 アカプルコからメキシコシティへの進軍の途上において、伊達政宗は無遠慮に私に話しかけてきて、私はそれに無愛想な返答をしていた。


 補給部隊を含めてだが、総勢で約5万人の陸軍がメキシコに攻め入っているのだ。

 それに対して、アカプルコ及びその近郊の住民から話を聞く限り、メキシコにいるスペイン軍の将兵は、海軍まで含めても1万もいないらしい。


 実際、今となっては歳月の流れで、かなり怪しくなった前世の私の歴史知識からしても、この当時のスペインに、本国ならともかく、メキシコやペルーといった植民地に万単位の軍勢を配置するだけの国力があったか、というと。


 更に史実と異なり、マニラ等を失陥しており、それにインド洋から喜望峰を介したアフリカ航路等を活用した東方交易の利益が、日本とオスマン帝国の連携によって完全に失われており、(既述だが)それに加えて国内の異教徒迫害まで起きて、それによる国内経済の混乱が起きていることからすれば。


 スペインにメキシコ防衛のために、1万を越えるような軍勢を配置する国力がある訳が無かった。


 というか、それだけの軍勢があれば、本国の治安維持というか、本国の異教徒迫害等にその軍勢を回すのが当然という状況に、この世界のスペインはあった。


 そして、アカプルコ及びその周辺で何が起きたか、という噂がメキシコ全土に広まっている。

 カトリック、キリスト教の信仰をあくまでも守れば、異教徒の日本人によって処刑され、遺体は火葬にされて、死後の復活は叶わないことになり、無間地獄に堕ちる運命が待っている、という噂だ。


 更に、その噂を肯定する事態が、ずっと起きているというか、私達は起こしている。

 私達の進軍の途上にあった、カトリック教会は全て破却されて、焼亡している。

 そして、進軍途上で遭ったカトリック信徒に対して、棄教か、この地を去るか、死かの選択を我々は行い続けており、その選択に従った事態を我々は引き起こしている。


 こういった現実を踏まえて、私が噂で聞くところによればだが、メキシコにいるスペイン軍の将、士官クラスの多くが、兵に対して、カトリック信仰を守って、日本軍と戦うように指導する一方、自らはスペイン本国への逃亡を策している現実があるらしい。


 こういった噂は話半分以下に聞くべきだろうが。

 私達がアカプルコからメキシコシティへの進軍途上で起きているのは、そういった噂を肯定している事態としか、言いようが無かった。

 そのために容易にメキシコシティに、我々が迫ることになったのだ。


 更に言えば、私が主に率いていると言える日本軍と、スペイン軍の間で質の差はほぼ無い。


 メタい話をすれば、テルシオ戦術やカラコール戦術を完成させているスペイン軍に対して、そういった戦術を知らない日本軍が真面に戦える筈が無い、10倍の日本軍と言えどスペイン軍は圧勝できる、と言われそうだが。


 実際問題として、銃砲を日本軍が知らないのならば、ともかくとして、この世界では日本の面々は、東南アジアからインド洋方面での戦いから、更にその際に投降して来たポルトガルやスペインの面々から、テルシオ戦術やカラコール戦術を見聞きしており、その対策を考え、実行してきたのだ。


 そういったことから、日本軍はメキシコシティを目指すのに、スペイン軍が対処するのに苦労した結果として、メキシコシティ近郊で日本軍とスペイン軍が激突する事態が起きたのだ。


 とはいえ、逃亡兵が相次いだ結果、日本軍の1割以下の将兵で、スペイン軍は戦う事態が起きて、更にそれがどうなったかというと。

 何とも言えない事態としか、私には言えなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  完全に残敵掃討レベルになったメキシコシティ制圧( ̄∀ ̄)テルシオやカラコールなどのヨーロッパで磨かれたドクトリンがどれだけ強力でも将兵に戦列を保持出来るほどの戦う気力が無ければ絵に描いた…
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