第105話
そんなことを、私が得られた最新の欧州情勢から、私は構想することになったが、余りにも気が早すぎる構想なのも現実だった。
何しろ、まだメキシコに侵攻さえもしていないのだ。
それなのに、更にその遥かな先まで先走って考えるのは失敗のもとだ。
そう考え、私達はまずはメキシコ侵攻作戦を立案することにした。
伊達政宗を始めとする奥羽の大名及びその家臣、それに私の子飼いの徳川家の家臣団、更にインド洋や日本本国から、自分も儲けようという思惑が透けて見えるが、駆けつけて来た様々な面々。
彼らと共に、私は具体的なメキシコ侵攻作戦を考えることになった。
とはいえ、基本構想は簡素なモノにせざるを得なかった。
私が総大将を務めるとはいえ、奥羽の大名にしても、インド洋や日本本国から駆けつけてきた面々にしても、伊達政宗を筆頭に俺が俺が、と言う面々がゴロゴロいるのが現実だ。
こんな面々を率いて、メキシコ侵攻作戦を行うのに、分進合撃のような精緻な作戦を行おう等、夢のまた夢と言っても過言では無い。
それに時代的に通信を始めとする様々な時代的制約がある。
通信は完全に伝令頼みだし、大砲や食料等といった物資を運ぶにしても馬車が頼りになるのだ。
(最も史実の日本だと、物資の輸送は多くを人力に頼っていたことからすれば、まだしも改善されたというべきなのだろうが)
こうしたことから、徳川水軍と日本本国から駆けつけた毛利水軍を主力とする50隻のガレオン船を主力とする艦隊に護衛させて、サンディエゴを出港した輸送船団はアカプルコを目指す。
尚、実戦部隊は約2万とし、物資の輸送等に当たる部隊を約3万として、輸送船団を編制する。
合計約5万人の部隊で、一挙にメキシコシティを目指して、メキシコシティを制圧、その後は部隊を分散させて、メキシコ各地を制圧していく。
尚、約5万人の陸軍だが、約1万人はカリフォルニアから出すが、残りの約4万人は日本本国から送ってもらわざるを得なかった。
海軍関係者(軍艦に乗り込む者、又、輸送船を操る者)は約3万人に達したが、これまた、日本本国から送られてくる面々に基本的に頼ることになった。
この当時のカリフォルニアの沿岸警備、更にはスペイン艦隊の攻撃を迎撃するために、カリフォルニアに日本の軍艦がいることはいたが、ガレオン船5隻程に過ぎず、それにカリフォルニアを完全に空にする訳にもいかないので、この5隻を動かすことはできなかったのだ。
この基本案で、会議に参加した面々は合意に達して、メキシコ侵攻作戦は行われることになった。
尚、徳川家の負担は陸軍が補給部隊も含めて約1万、海軍が約5千といったところになった。
私は、スペイン領メキシコの防衛に当たっている部隊が、どれだけいるのだろう、と推測した。
恐らく陸海全ての部隊を合わせても、約1万といったところではないか。
それこそ本国防衛が最優先である以上、2万、3万といった部隊をメキシコに、スペインが展開させている可能性は低い。
実際、カリフォルニアから日本本国に向かう商船団は、海流等の関係で、一旦はメキシコ沖まで南下した上で西進し、フィリピンに寄港して補給を受けた上で、日本本国に向かうのだが、メキシコ沖でスペインの軍艦に偶に遭うものの、大抵は1隻で、3隻の艦隊に遭った商船団はいない、という情報が私の下に届いている。
そうしたことからすれば、アカプルコにいるスペインの軍艦は精々が5隻といったところだろう。
そこに約50隻の艦隊を向けるのは、過剰戦力の気もするが、短期戦で済ませた方が、費用等が掛からないことからすれば、妥当と言えるのでは。
私はそんなことを考え、陸海軍の編制を進めていった。
少し補足説明をすると、時代的に補給部隊の将兵も護身用に刀や短槍等を基本的に携帯しており、いざと言う際に全く戦えない訳ではありません。
そういったことも考え合わせれて、約5万の陸兵の約3万人が補給部隊に回されています。
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