15
猫ちゃんの頭に触れたとたん、わしの中に何かが流れ込んでくる。
これは……。
魔力だ。猫ちゃんの魔力がわしの中に流れ込んでくる。
そして、身体の中を駆け巡っていく。
これは…こういう使い方をしたことはなかった。
力がみなぎってくる。
ここまでくるのに少し疲れはあったが、それがなくなっている。
それどころか身体が軽い。
これは、若い時の身体の感覚だ。
年をとったら思った以上に身体が重荷となることを感じていた。
「じゃあ、ついてくるにゃん」
猫ちゃんは二本の尻尾をピンとたてて前をあるく。
わしはそのあとについていく。
猫ちゃんはだんだん速足になる。
しかし、わしも走ることができる。
それも息が苦しくはない。
猫ちゃんのスピードが速くなる。
ときどき、猫ちゃんは大丈夫っていうように振り返る。
しかし、たやすくそのスピードについていける。
たぶん、これはスピードアップの魔法もかけられてる。
もしかして、さっき猫ちゃんが瞬間移動したのも、この魔法なのか。
しかし、猫ちゃんの住み家ってどんなところだろう。
野生では穴を掘って巣にする猫がいるって聞くが。
もしかして遺跡の洞窟とか、そういうところではないだろうか。
森の中なので、木の上とか。
わしは猫ちゃんと獣道をたどっていく。
少しすると、だんだん道が広くなってくる。
いや、石で舗装されたような跡さえ見られる街道になっていく。
まさか、これが古代文明の遺跡。
そういえば、さっき木の上から見たとき、こんな道なんかなかったはずだ。
もしかして、隠蔽の魔法までかけられているのか。
そしてついに石の門が現れる。
ここはまさにわしの探していた古代遺跡の町だ。
猫ちゃんは門の前でにゃーと鳴く。
そのとたん、石の門が左右に開き始める。
どういうことだ。
中に人がいるのか。
門が開き切ると、その中に猫ちゃんは歩いていく。
わしもそのあとに続く。
たぶん、風化で崩れた石の町なのだろう。
その中に古代魔法の秘密を解き明かすものがあればいいのだが。
時間はたくさんある、ゆっくりと考えようではないか。
「ただいまにゃん」
猫ちゃんは門の左右の石造に挨拶する。
石造は猫ちゃんに礼をする。
いや、これは石造というよりゴーレムだ。
「おかえりドラちゃん」
それから、少年と少女が猫ちゃんに駆け寄ってくるのだった。