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ウサギくらいの大きさ。
全身茶色のモフモフの毛に覆われた身体。
いや茶色でなく黄金色だ。
そして、縞々の尻尾を二本揺らしてわしを凝視しているのだ。
こいつは噂に聞く魔法猫だ。
可愛い容姿だし、敵意はなさそう。
本当なら攻撃する必要はない。
しかし、こいつが古代魔法の秘密を知っているのなら別だ。
わしは犬よりも猫好きなんだが、そんなことは言ってられない。
それに殺そうってわけではない。
魔法の勝負を挑むのだ。
「君が魔法猫くんか?」
「おまえは誰にゃん。
森で迷ったにゃん」
脳内に直接語りかけてくるような声。
人間の声帯を持たない猫、何らかの魔法を使っているのか。
もちろん、わしの知る魔法ではない。
それに、この猫ちゃん、おはなしができるのか。
高位の魔獣は人間の言葉を理解すると聞いたことがある。
それなら、いろいろと話してみたいものだ。
猫ちゃんとお話ができるなんて最高じゃないか。
「わしはブラックウッド、隠者じゃ」
「ここに何をしにきたにゃん」
「わしは魔法を極めるためにここに来たんじゃ」
「魔法にゃん?」
「おまえは魔法猫じゃな」
「ぼくはドラにゃん」
「ドラというのか?
わしは魔法猫と幻の古代遺跡を探してここまできたんじゃ」
「ドラは魔法猫にゃん。
でもおかあさんとかおにいちゃん、おねえちゃんみたいに魔法は使えないにゃん」
「魔法猫なのじゃな。それなら、一度わしと戦ってくれないか」
そうだ、本当なら猫ちゃんとは戦いたくない。
しかし、魔法猫だっていうのなら、戦わないとならない。
古代魔法の唯一の手がかりなのだから。
ただ、猫ちゃんは魔法が使えないって言ってたな。
とにかく、猫ちゃんの実力を見たい。
わしは一番弱い魔法、ファイアーボールを猫ちゃんに向けて撃つのだった。