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わしは魔法で飛び上がり、一番高い木の上に降り立つ。
そこから周りを見回す。
本当は空を飛べればいいのだが、わしの魔力では飛び上がるのが精一杯だ。
何メートルかは飛べるだろうが、魔力の消費が激しすぎる。
ただ、ジャンプという意味の跳ぶならなんとかなる。
空に飛び上がることで、方向は間違えることはない。
四方を見渡すが町のようなものはない。
もっと奥なのか。それとも山の裏なのか。
あっ、あれは。
少し開いた場所があって、そこに石の祭壇みたいなものがある。
もしかして、遺跡?
とりあえず、あそこに行ってみよう。
なにか手がかりがあるかもしれない。
わしは、方向だけを覚えて下に降りる。
そして、その方向に歩き出す。
ときどきジャンプして修正すればたどり着けるだろう。
きままな一人旅だ。
ゆっくりすればいい。
もし、幻の町がみつからなかったとしても、わしがここで体験した記録は後世でなんらかの役にはたつだろう。
しばらくして目的地につく。
石の祭壇があって、まわりに巨石の柱が立っている。
こんな森の奥になんのためにこのようなものを作ったのかはわからない。
もちろん明らかに自然のものではない。
わしは祭壇の近くに腰かけて休憩をする。
とくに祭壇や柱にはなにも刻まれていない。
わしは注意深くまわりを見回す。
この祭壇は原始的なものだ。
たぶん、わしの探している古代人が作ったものではないだろう。
どちらかというと古代人を崇めるためにつくられたものではないだろうか。
と考えると幻の町とまったく無関係ともいえないだろう。
ここで待っていれば、古代人が現れたりするのだろうか。
わしは目を閉じて、その風景を想像する。
原始の人々にとって、高度な魔法を使いこなす古代人というのは神にも近しい存在だっただろう。
石舞台に降り立つ古代人、その前にひれ伏す原始の人々。
たぶん、これはそのための祭壇だ。
さて、神が現れてくれればいいが。
祭壇は苔生していてしばらく使われた形跡はない。
いちばん近い村からでも、相当な距離がある。
ここをまつることはないのだろう。
そのとき、何かの気配を感じる。
ネズミ?いや野兎?
わたしがその方向を見ると、2つの光る眼。
その眼は、草むらの陰からゆっくりと姿を現すのだった。