06
でも、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
いくらぼくたち魔法猫と言っても、天敵はいる。
その中でもいちばんやばいのは大ガラスだ。
それはむこうのカラスの3倍くらいの大きさだ。
ぼくにとって向こうの世界のトラウマがあるから、こいつらを見ると身体がうごかなくなってしまう。
一匹だけなら魔法猫のほうが強い。
しかし、やつらは集団で狩りをするのだ。
それもきちんと役割を決めて、獲物をわなにかけるのだ。
ぼくたち猫にとってそういうのは一番苦手なのだ。
カラスにとってぼくたちは餌としてあまりいいものではない。
っていうのも、そこそこ抵抗する上、一匹で行動する。
あまり喰いでがないのだ。
では、なぜカラスがぼくたちを狙うかっていうと、カラスとぼくたちが狩る動物が同じってこと。
ぼくたちを排除すれば、喰いぶちはふえる。
そういうところまで考えて行動する。
それに比べて、ぼくたちは集団行動が苦手。
頭をつかうのは苦手だ。
そういうわけで、カラスとぼくたちがバッティングした場合、ぼくたちが追われることとなる。
でもそれは悪ではない。
野生の世界では、弱肉強食が掟だ。
弱いほうが悪いのだ。
元の世界でうけた惨劇も同じ。
あのときはカラスを恨んだんだけど、カラスも生きるために兄弟を食べたのだ。
長く生きることでそういうのはわかってきた。
だから、勝てるってとこまでは戦わない。
むこうが襲ってこないかぎり、無理な衝突は避ける。
カラスのほうもそう、おかあさんは魔法猫の中でも屈指の実力者みたいだ。
そのおかあさんの逆鱗に触れることはない。
目の上のたんこぶみたいに思っていてもだ。
ぼくたちは微妙な均衡の中で生きていたんだ。
しかし、その均衡が破れるときが来た。
おかあさんがケガをしてしまったんだ。
おかあさんが間違えてワイバーンの縄張りに入ってしまったのだ。
ワイバーンというのは小型の竜種。
ドラゴンの中では最弱かもしれないが、あくまでドラゴンの中ではの話。
いくらおかあさんでも相手が悪い。
戦わずに逃げたのだけど、足に大けがをしてしまったんだ。
このときのぼくたちにとって、ワイバーンはやばい敵なのだ。
大型竜はぼくたちの相手をすることはない。
しかし、小型竜はスピードが早いんだ。
むかしおねえちゃんとテレビを見ていたときにそういうのがあった。
人間にとって本当にやばいのは小型の恐竜。
まさにそれと同じだった。
でも、お母さんは逃げることはできたのだ。
その代償がブレスに焼ききられた右後ろ足だった。