06
城は簡単に脱出できた。
さて、どうしようか?
すぐにお尋ね者になるんだろう。
もとから、身をひそめて生きるつもりはない。
わしにはやりたいことがあった。
それは本で読んだ古代文明の話。
そう、古代には魔導を生活のためにつかっていた国があったとのことだ。
古代の哲学者の書いたものに少しだけ出てくる。
その、街は深淵の森にあったと推測されている。
そんな街があったのなら是非みてみたいものだ。
とにかく隠居をする歳でもない。
深淵の森を目指そう。
たしか入り口は共和国ランベールの町だったな。
国境を超えなければならないな。
まあ、そんなに難しいことではないがな。
「まて!ブラックウッド!」
わしを追いかける一団。
その声は第二魔導士団コンラッド。
わしは足をとめて振り返る。
「裏切者、ブラックウッド。
神妙にお縄につけ」
「裏切者?さて」
何も裏切ったとか覚えがない。
「しらばっくれるな。お前は王命をなんと心得る」
「戦争のことか。
する必要はないだろう」
「それが魔導士団を預かる者のいうことか?」
「ああ、一軍を預かるものとして諫言しなくてはならない。
上の立場の者がおかしいことはおかしいと言わなくてはならないのだ」
「だから、お前は裏切者なのだ。
お前のような日和った考えでは王国のためにならない。
そんなことをしていては共和国の脅威に対抗できない。
お前の考え方は王国を衰退させるだけだ」
いや、戦争をやってるから衰退しているのだろう。
民たちは疲弊しているよ。
まあ、もうわしには関係のないことだ。
わしは深淵の森で古代の魔法を探す。
それ以外のことはどうでもいいことだ。
ただ、わしの邪魔をするのなら、排除しなければならないな。
「お前を倒す。
それが王国のためなのだ」
コンラットは杖を掲げる。
その後ろで5人の魔導士が同じように杖を掲げるのだった。