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それにしてもくだらない会議だ。
わしはブラックウッドという魔導士だ。
若いころから魔法の研究に打ち込み、60を超えた今、この国でも最高峰の魔導士としての地位についている。
王国魔導長という地位だ。
わたしは一万人を超える魔導士部隊のトップを務めている。
王国の魔導士、魔法使いはわしの采配で動くのだ。
「それで、デルモント公国への進軍だが」
国王が我々の顔を見回しながら言う。
また、戦争か、この前前の戦争が終わったばかりなのに。
やれやれだな。
国王の目がわたしに止まる。
もしかして、うんざりしているのがばれてしまったのか。
「わしは時期尚早だと思いますね。
まだ、前回の戦争の後始末も終わっていません。
それに、戦争をするとしても大義名分がありません」
「大義名分ならあるではないか。
かの国の国民も強国であるわがロラン王国の傘下にはいるほうが幸せであろう」
「もともとわが国から独立した国ではないか。
それがもとに戻るだけだ」
右将軍、左将軍が国王側につく。
この脳筋共め。
少しは頭を使え。
戦争なんてやっても、なにもいいことがない。
たぶん、相手は小国。
簡単にねじ伏せられると思っているのだろう。
だが、そんなにうまくいくわけない。
バカげたことは長引くのだ。
そして長引けば長引くほど、よけいなものが入ってくる。
それは正義がこちら側にないから猶更だ。
「今回の戦争は簡単だと思います。
まず、国境付近に軍を展開すれば、デルモントのやつらは降参するでしょう。
力の差が大きすぎることをわからないほどバカなやつらではないでしょう」
「それにもともとはわれらの国の一部。
ほとんどのデルモント国民は大国であるロランに戻りたがっていると聞いています」
希望的観測ばかり。
耳障りのいい情報ばかりで、それ以外をシャットアウトする。
わしも一度かの国に行ったことがある。
小国だが、自由で良い国であった。
国民の顔もロラン王国のような曇りがない。
デルモントの大公はかなり良い治世者であるようだ。
その元で発展した国は強い。
外交にも力を力をいれており、共和国との関係もある。
共和国は王国の力があまり大きくなることをよしとしない。
直接手出しはできないがなんらかの手は打ってくるだろう。