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ガウェインはぼくの狐火を正面から受け止める。
そのとたん、ガウェインの剣が折れて飛ぶ。
それだけでなく。ガウェインは後ろに吹っ飛ぶ。
あくまで、ぼくの攻撃を受けようというのか。
王者の戦い方だ。
相手の技を受けきって、最後自分の攻撃で倒す。
そのことで、相手の心も折ってしまう。
もし、生き残っても2度とガウェインと戦おうとは思わないようにする。
さすがランスロットさんに並ぶ超人だ。
たぶん、受けきられるだろうけど、次の攻撃だ。
第三段階、これが初級の最後だ。
炎蛇、炎のビームだ。
ぼくは構える。
基本突きの構えだ。
ガウェインはよろめきながら立ち上がる。
そして、笑う。
その笑い方は肩をすくめて、なんか卑屈な感じだ。
「もう、十分っす。
降参です。もう許してください。
山賊なんてもうやめます。
え、ランスロットさんの弟子でしたか。
さすがですね。やっぱ剣神っていわれるだけあって、弟子まで強いんですね。
すみませんでした。
もう、アッシュさんには逆らいません。
ごめんなさい、ごめんなさい
命だけはお助けください」
膝をついて、何度も地面に頭を打ち付ける。
この人、本当に剣皇とかいう人なの?
まさか、これも作戦、近づいたとたんに攻撃をするとか。
もしくは影武者。
ぼくは、用心のため剣を振り上げる。
「ひぃ、すみません、すみません。
許してください」
目の前でぼくを拝んで泣き出すガウェイン。
なんか、ほんとにおびえているように見えるな。
「アッシュ。もう許してやれ。
このまま、ギルドに引き渡そう」
ライオネルさんが、ぼくの肩に手をかける。
「はい、ライオネルさん。
でも、この人、偽物かもしれません。
ランスロットさんに並ぶ人がこんなに弱いはずありません」
「いや、おまえが強すぎんだよ。
おれも、おまえと戦って一合も交えられる気がしない。
その点で2回攻撃を受けたガウェインはやっぱ強いんだよ。
とにかく、勝利を叫んでくれ。大将」
ランスロットさんの言葉にぼくは腕を振り上げる。
「敵の大将、ガウェイン、落としました!」
ぼくがそう叫ぶと、冒険者側はみんな腕を振り上げ勝鬨をあげるのだった。