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「サービスってどういうことだ!」
「あの飲食代をただにしろって」
あまりのライオネルさんの権幕に震える声で店の人が答える。
「そうか、そうか。
こいつらは町を守ったんだったよな。
おれがかなわなかった赤オーガを倒してな」
ライオネルさんの髪の毛なんか逆立ってない?
それに額にすごい青筋が立ってない?
「おれはな。
冒険者ってもっと尊敬される職業だと思ってんだ。
自分の技や力を鍛えて、町の人を守ったり、必要なことをこなしたりする。
そうだよな、紅の豚」
「そうです」
間違われても訂正さえできない迫力だ。
クレイブが震えながら同意する。
「でもな。その力を使って町の人を脅したりするやつらもいる。
おまえらはそうじゃないよな」
ケリーさんにめっちゃ顔を近づけている。
それに白目になってるし。
「はい。違います」
ケリーさんは真っ青になっている。
たぶん漏らしてるかもしれない。
「そういうやつらのおかげで、冒険者って乱暴者とかいうイメージが抜けないんだ。
そして、おれはそういうやつらが一番嫌いなんだ。
それで、おまえら親友のアッシュと何をもめてたんだ。えっ?」
「なんでもありません」
小さな声で目をそらしながら答えるクレイブ。
なんかいつもよりひとまわり小さく見える。
「そうか。なんか逃げるのをとめられたとか。
いずれにせよ、おまえらにはギルドからなんらかの沙汰が下る。
除名か降格それくらいで済むだろう。
アッシュに感謝しろよ。
おまえらのびてて、本当に逃げなかったからその程度で済むんだ。
もし、本当に逃げてたら強制クエストで敵前逃亡だから鉱山で強制労働だったな。
それから、おまえら紅の豚の顔は覚えた。
もし、今後同じようなことをしたらわかっているよな。
失せろ!」
ライオネルさんがそういうと脱兎のごとく逃げていく紅の豚、じゃなくて暁の虎の人たち。
「騒がしくして、すまなかったな。
これで新しいテーブルを買ってくれ、それから今日はおれのおごりだ。
みんな、好きなだけ飲んで食ってくれ!
今日はこのアッシュとミリアが町を救ってくれた祝いだ!」
ライオネルさんがそう声をあげるとレストランの中は歓声と拍手につつまれるのだった。
かっけえ、なんのスカッとジャパンだよ。
再現フィルムはたぶん竹内力だな。
ぼくはわけのわからないことを考えたのだった。