04
「ドラちゃんだったね。
良く生きたね」
白い服の女の人がぼくに話しかける。
ぼくは、女の人を見上げる。
「猫ちゃんにわかるかな?
ドラちゃんは死んじゃったんだけど、きちんと寿命を全うしたんだ」
うん、すごく幸せだったし、とくに思い残すことはなかった。
「それで、ちゃんと生きた子にはご褒美があるんだ」
ご褒美って、おやつかな、もしかして〇ゅーるかな?
わくわくした顔で女の人を見上げる。
「そのご褒美っていうのはね。
食べ物じゃないよ
もちろんおもちゃでもない」
なーんだ。じゃあいらないや。
興味なさげに毛づくろいをする。
「生きることの達人にはね。
もう一度生まれ変わってもらうの。
もちろん、違う世界でだけどね。
たくさんの祝福をあげるから、またたくさん生きてね。
そして、もしできたら、その世界のためになにかしてくれると嬉しいな」
しゅくふく?それってたべられるの?
ぼくは耳を立てて、女の人を見つめる。
「祝福っていうのは、チートってこと。
君は最初から強くてなんでもできるんだ」
でも、ぼくは前からなんでもできたよ。
よく食べて、よく寝て、よく遊んで。
これ以上に必要なものなんてなにもないよ。
「とにかくもう一度生きてもらうね。
じゃあ、がんばってね」
そう言って白い女の人は手を振る。
なんか勝手なこと言ってるけど、なんかぼくを拾ってくれたおねえちゃんに似てる。
でもがんばるなんていやだな。
ぼくはまたたくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん寝るだけだから。
次の瞬間またぼくの意識がなくなる。
そして、次に目覚めたのは深い緑の中だった。
周りにはぼくと同じモフモフしたのが身を寄せている。
たぶん、ぼくの兄弟。
その僕たちを優しい目が見下ろしていた。
こういうのもとの世界でもあったな。
ぼくは兄弟たちの間に身をもぐりこませた。