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「今回、ぼくもミリアもE級に昇格しました」
「オーガ討伐のどさくさにまぎれて過大申告したんだろう」
「でも、ぼくの攻撃で簡単に吹っ飛ばされてしまいましたよね。
たぶん、ぼくらのほうが強いです」
「おまえらはあの状況で仲間を殴ったりしたんだぜ。
とんでもないやつらだ。
それに比べおれたちは町のみんなのために命をかけて働いたんだ。
みんな聞いてくれよ」
クレイブは大げさに演技をする。
まるで舞台俳優だ。
「それはあんたらが、逃げようとしたからでしょ。
それに手を出したのはあんたらが先だったわよ」
ミリアがぼくの弁護をしてくれる。
ぼくはあんまりこういうの苦手なんだよな。
「とにかく、こいつらはE級、おれらはD級だ。
今回も相当の報酬をもらえるはずだ。
それに、昇格もあるかもしれない」
クレイブの演技は続く。
「なにもめてんだ。アッシュ」
そこに、割って入る人。
ライオネルさんだ。
「めしでも一緒しないかと思ってさ。
ここに泊ってるんだよな。
で、こいつら誰だ?」
「ライオネルさん」
クレイブたちはライオネルさんを見て固まる。
元C級とは言ってもB級冒険者は雲の上の人なのだ。
「暁の虎の人たちです」
「暁の虎?」
少し考えるライオネルさん。
「あ…あの暁の虎ね」
「知ってるんですか」
嬉しそうにケリーがライオネルさんに言う。
「たしか新人冒険者からクレームが入ってたな。
なんでも自分たちを置いて逃げようとしたとか
アッシュ、それでその紅の豚がどうしたんだ」
いや、ひとつもあってないし、なんか聞いたような名前だし。
「いえ、この店の人たちに町を守ったんだからサービスしろって」
「なんだと!」
ライオネルさんは机をたたいてクレイブたちをにらみつけるのだった。
机は粉々にくだけるのだった。