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とにかくぼくの力くらいで倒そうと思ってはいけない。
時間をかせぐのが目的。
だから大技は必要ない。
獄炎ではなく灯火という技を使う。
これはほとんど魔力をつかわない。
ただ、攻撃力も最弱だ。
刀身が青い光を帯びる。
それで、すばやい剣戟をくらわす。
それも、急所ではない。
とりあえず腕を狙う。
うっとおしい攻撃をしていらいらさせる。
これが作戦だ。
ぼくの剣は青オーガの右手首をとらえる。
たぶん、こんな攻撃が利くとは思っていない。
ただのいやがらせだ。
いらいらしたオーガの攻撃を避けまくる。
それなら弱いぼくでも3分以上稼ぐことができるだろう。
えっ?
ぼくの剣戟でオーガの手首と斧が飛ぶ。
まさかラッキーパンチみたいなの入っちゃった。
そのまま、もう一方の腕も斬る。
オーガの腕がまた宙を舞う。
うそだろ?
そのまま、踏み込んで首を斬る。
オーガの巨体は倒れる。
あれっ、大銀ネズミより簡単に倒せたぞ。
これはビギナーズラックってやつ?
ちょっとあっけにとられるぼくに、左右からオーガが襲い掛かる。
あ、ちょっと油断してた。
ぼくはこん棒を避け、飛び上がる。
空から右のオーガに全体重をかけ剣を振り下ろす。
オーガは脳天から真っ二つになる。
まさか…
今日の運勢の1位はおとめ座さんだったかな。
めちゃくちゃついてる日なのかもしれない。
そのまま回転してもう一方のオーガの胴を払う。
オーガの上半身が落ちる。
ぼくはライオネルさんを振り返る。
ライオネルさんはぽかんと口をあけて放心状態だ。
「ライオネルさん。
これからどうします」
「アッシュ。おまえ何者なんだ」
ライオネルさんは気をとりなおして、ぼくに問いかけるのだった。