39
ライオネルさんは青オーガと戦闘中だった。
かなり疲れているみたいで肩で息をしている。
「ライオネルさん、少し代わります」
「おまえは、アッシュ。
何をしに来た」
「手伝います。少し休んでください」
「なにを…おまえらじゃどうにもならない。
命を粗末にするんじゃない」
オーガの攻撃を避けながらライオネルさんがぼくたちの協力を拒否する。
「でも、このままじゃ」
「ああ、俺らではこいつらには勝てない。
だから、できるだけ抵抗する。
おれらが倒れたら、こいつら俺らを食う。
その間に町のみんなが逃げられればいい」
「そんな」
「だから、お前らは逃げるんだ。
おまえらが強くなって俺らのあとを継いでくれればいい。
力をつけてみんなを守ってくれ」
ライオネルさんはそういう。
そういえば、ドラも同じことを言ってた。
ぼくがみんなを守るにゃんって。
ぼくがここに来たのはドラにそう教えられたから。
ドラに守られたぼくたちは、かわりにできる限りのものを守るんだ。
「いやです。
1分、いえ3分稼ぎます。
その間に態勢を立て直してください」
「アッシュ。わかった。
おまえたちに任せた」
ライオネルさんは涙声で言う。
ぼくたちが死んでしまうと思っているのだ。
たぶん敵は強い、しかしただでやられてはやらない。
とりあえず、時間を稼ぐ。
そのためにはスピードだ。
さっきから見ていたが、この青いオーガ、力は強いのかもしれないが、それほど速くない。
深淵の森で戦った黒いオーガの10分の一くらいのスピード。
だから、速さで翻弄する。
「わたしがライオネルさんにヒールをかけるわ」
ミリアは後ろに下がったライオネルさんの治療を始めるのだった。