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「クレイブさんたちがぼくたちを置いて」
「そうか。とにかく逃げろ」
ぼくは新人冒険者を逃がす。
D級のクレイブと違って、G級には戦う義務はない。
逃げてもなんの罪にも問われない。
それに比べてクレイブたちはペナルティがあるはずなんだけどな。
こんなことをしているからC級からD級になったのかもしれない。
別のオーガがこっちに向かってくる。
ぼくはその前で剣を構える。
ぼくの剣は炎をまとい始める。
そう、ぼくの剣技だ。
魔法剣と言ってもいい。
ぼくは剣にいろいろな炎魔法をまとわせられる。
ドラといっしょに剣の修行をしていて会得した技だ。
炎をまとった剣身は本来の2倍くらいの長さになっている。
ぼくの刀は普通サイズの両手剣だけど、大剣くらいのサイズになっている。
その剣でオーガを袈裟切りにする。
オーガの肩から脇に炎の刃が抜ける。
そう、これは炎ではない。
まるで溶岩、マグマ、だからほとんどのものを溶かしてしまう。
オーガの骨肉も同じ。
だから、ぼくはこの技に獄炎という名前をつけている。
ぼくの目の前でオーガの上半身が落ちる。
他のオーガの動きが一瞬止まる。
簡単にぼくたちを蹂躙できると思ってたんだろう。
そうはいかないよ。
高位の冒険者ほど強くないが、ぼくたちだって少しは抵抗することができるのだ。森の中ではジャイアントベアーや黒オーガと戦ったこともある。それからドラゴンのアーサーとも模擬戦をやっていた。
それに比べれば、いままで倒したオーガは手ごたえがない。
まあ、中でも最弱の先兵だったんだろう。
「お前らとりあえず逃げろ」
「はい。すみません」
やつらが警戒しているうちに新人冒険者を逃がす。
新人冒険者は町のほうに逃げていく。
これで、D級以上だけになった。
つぎは、ライオネルさんのところだ。
やっかいなオーガがいるみたいだ。
だから、一度下がってもらって態勢を立て直す。
まあ、ぼくたちレベルになにができるかわかんないけど、少し休んでもらうことができればいい。
「ミリア行くぜ」
「うん、アッシュ」
ぼくたちは、戦場を走る。
その間に前にいるオーガを何体か倒す。
全然手ごたえがない。
もしかしてドラの村の近くにいる一角ウサギより弱いのでは。
たぶんこいつらの先兵だろう。
ぼくたちはすぐにライオネルさんのところに到着するのだった.