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「これは無理だな」
「ええ、クレイブさん。
このままじゃ殺されるだけですよ」
「とりあえず、逃げましょ」
どこかで聞いたような声。
そして、3人がこっちに走ってくる。
ライオネルさんのところに向かうぼくたちとすれ違う。
ぼくはやつらの前に立ちふさがる。
「アッシュじゃねえか。
そこをどけ!」
「何をしてるんですか?」
「逃げるんだよ。こんなやつらに勝てるわけない。
命あっての物種だ。
おまえらも逃げたほうがいいぜ」
「でも、ぼくたちが食い止めないと、町が」
「知ったことかよ。
俺らは冒険者だぜ。
町とか国は騎士団とかそういうのが守ればいい。
町のやつらは俺らを半端もの扱いする。
こんなときだけ命をかけて守れっていうのか。
虫がよすぎるぜ」
ケリーがそう言ってぼくを押しのけて逃げようとする。
でも、ぼくは動かない。
っていうか、こんな力で押されてもって感じだ。
逆にぼくが軽く押すとケリーは後ろに吹っ飛ぶ。
嘘だろ。この程度で。
「野郎」
今度はクレイブが殴りかかる。
でもスローモーションで、だ。
ぼくはそのパンチに合わせてカウンターを打つ。
クレイブはそれをもろに食らってくるくると回転して倒れる。
「助けて、ぼくらにオーガなんて止められないよ」
クレイブたちの後ろで新人冒険者たちが震えている。
もしかして、あいつらをおとりにして逃げてきたのか。
クレイブたちにかまっている場合じゃない。
ぼくとミリアは新人冒険者のほうに走る。
そこに迫るオーガ。
そのオーガが足を止める。
オーガは前に進めない。
だって、その下半身は凍っているのだから。
これはミリアの仕業だ。
ぼくは剣を抜いて、動けなくなくなったオーガの首に斬撃を決めるのだった。