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門の前ではオーガと冒険者の戦いが続いている。
オーガのほうはほとんど無傷。
それに対し、冒険者は何人か倒されている。
その中でライオネルさんが青オーガと戦っている。
青オーガはこん棒ではなく手斧を持っている。
普通では両手で使う斧を両手に持っている。
それで、ライオネルさんに襲い掛かる。
それなりに速い攻撃だ。
ライオネルさんは大剣でそれを受け止める。
互角の戦いだ。
ライオネルさんは一度後ろに下がる。
そして、後ろの剣士になにか伝える。
それから、また突っ込んでいく。
後ろの剣士はこっちに上ってくる。
「ライオネルさんから伝言だ。
逃げろ!町に戻って、報告せよ。
ここは持ちこたえることはできない。
町を捨てて逃げろ。これは災厄だ。
ギルドマスターに報告せよ。
我々は時間を稼ぐ」
「アッシュ。戻るぞ」
ガゼルさんはぼくに声をかける。
「えっ?」
ぼくも戻るのか。
「全力で走るぞ。おれらの足で町のみんなを救う。
一時でも早くギルドマスターに報告するんだ。
これは重要な仕事だ」
ぼくはミリアと目で会話する。
そう、逃げるなんてごめんだ。
ぼくたちは戦うためにここに来たんだ。
「ガゼルさん。ぼくたちは戦います。
ガゼルさんは報告してください」
「バカ野郎。
伝令も重要な仕事だ」
「ではガゼルさんが戻ってください。
ぼくたちは、ライオネルさんを見捨てることはできません」
ぼくとミリアはそういうと、見張り台から飛び降りる。
「だめだ。無駄死にするだけだ」
ガゼルさんが叫ぶけど、もう振り返らない。
ぼくたちはライオネルさんに向かって駆け出すのだった。