03
「ねえ、お母さん、この子飼っていいでしょ」
ぼくは、おねえちゃんに抱きしめられる。
「しかたないわね。
でも、この子で終わりですよ。
うちにはもう3匹いるんだからね」
お母さんがおねえちゃんをたしなめる。
「はあい」
「そうだよ。
この子を飼うってことは、それだけの責任が必要なんだ。
この子が成長して死ぬまで、ぼくたちは責任を持たなければならないんだ。
その覚悟があるのなら飼いなさい」
「わかった。
この子のことずっと大事にする」
そう言ってぼくはもう一度抱きしめられる。
ぼくは、この人たちに拾われて救われたんだ。
お父さんがカラスを追い払ってくれたんだけど、ぼくの兄弟たちは助からなかった。
ぼくはドラって名前をつけられた。
有名な猫型ロボットからもらった名前だ。
ぼくの先住猫は3匹いた。
白猫のミミさん。キジトラのコテツさん。白黒のララさん。
とくに子猫のときはなぜか雄のコテツさんが面倒をみてくれた。
ぼくが慣れるまで、毛づくろいをしてくれたり、トイレの世話をしてくれたりしたんだ。
その役目はぼくが大きくなって受け継ぐことになったんだけどね。
とにかく、それからのぼくは幸せだった。
それから20年、ぼくは天に召されることとなった。
ぼくは家族のみんなに対する感謝とともに思ったことがあった。
それは、みんなになにか恩返しをしたいってこと。
おとうさんはドラはかわいいだけでいいんだよ。
君たちはかわいいのが仕事だっていう。
でも、ぼくにもなにかできることはなかったのだろうか。・
まあ、それももう遅いんだけどね。
とにかく、ぼくはすごく眠かった。
おかあさんやおねえちゃんの泣き声が聞こえた。
ドラ、戻ってきてって。
無理だよ。ぼくはたくさん生きたんだよ。
ぼくの目の前はだんだんぼやけていく。
そして、空に登っていく感じ。
ふわふわと高く高く。
なんかすごく気持ちいい。
そして、ぼくは目をあける。
そこは雲の上の世界、ふわふわとした地面、そして白い人たちがいて、ぼくを見下ろしていた。
ぼくは、身を低くして、尻尾を動かしながら様子をうかがうのだった。