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「それは…まあいい。
おまえらはまだG級なんだろ。
君たちはこんなやつらのたわごととD級クランの俺たちのどっちを信じるんだ」
「そうよ。この子たちはアッシュ、あなたたちのようなバカとは違うのよ」
「騙されちゃだめ。
この人たちはあなたたちを奴隷にしようとしているの」
ミリアは若者たちに語りかける。
「こいつらは困難なクエストから逃げ出したやつらだ。
そのおかげでゴーディが片腕を失った。
そこまでして守ってやったのに、おれたちを裏切ったんだ。
そんなやつらの言葉など聞く必要はないよな」
「嘘ばっかり」
「おれらはDランク、こいつらはGランク。
どっちの言うことを聞く」
「Dランク?Cランクだったはずじゃなかったかな」
ぼくは疑問を口にする。
「あのクエストの失敗から、うまくいかなくなって、降格とはなった。
しかし、それから地道にクエストをこなして、もうすぐCランクに戻れるところまで来ているんだ」
冒険者のランクはクエストの結果によって上下する。
クエストを行わない期間が長かったり、重要なクエストの失敗。
あと普段の素行なんかも考慮される。
っていっても冒険者はならずもの、自由人が多い。
だから、相当のことをやらないとそれで降格されることはない。
だけど、暁の虎の中で下働きをしてわかったんだけど、このクランは相当に評判が悪かった。
他のクランからいい仕事を取り上げたり、酒場でけんかをしたり、弱いものをいじめたり。
若い田舎者を奴隷にすることもみんな知ってたのだ。
ギルドもCランクを与えたことに頭を抱えていた。
そう、いつ落とされてもおかしくない状況だったのだ。
しかし、この町には高位の冒険者は少ない。
乱暴だが、Dクラス以上の討伐クエストにはこいつらを使うしかなかった。
Bランクのクランも一組だけいるが、その程度のクエストに使うことはできなかったんだ。
「おまえらに信用なんてないんだよ」
クレイブは鼻で笑う。
「まあいい。でも君たち、こいつらに騙されるんじゃない。
とくに簡単に契約をしてはいけない。
まず、一緒にクエストをひとつでもこなしてからのほうがいいよ」
ぼくは、若者たちのほうに向いて言って、引き下がる。
「アッシュ!」
ミリアはまだやりあうつもりみたいだけど、これ以上やっても同じだ。
ぼくはミリアをなだめて食事の席にもどるのだった。




