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「なんだ、おまえたちは」
クレイブたちはぼくたちに目をやる。
そして、静止する。
「おまえらは…」
ゴーディの顔に怯えが走る。
「とにかく、君たちこいつらの言うことを聞いたら駄目よ。
そんなうまい話なんてあるわけないの。
今の君たちに近づいてくるのはだまそうとしている奴らだけ」
「なんだと」
クレイブはおれたちにすごんでくる。
たぶん、ミリアでも大丈夫だと思うけど、いちおうぼくが前に出る。
「アッシュじゃねえか。
よく戻ってこれたもんだな」
クレイブがぼくの前に立つ。
「おかげさまで」
「なにが、おかげさまで…だ。
おまえらは主人を裏切った奴隷だぞ。
訴えれば、おまえらは罪人だ」
「でも、奴隷の証である腕輪や契約書はどこにあるんですか」
そう、ドラの村にはぼくたちのといろいろな人がやってきた。
っていうかドラが連れてきたのだ。
その中にグリフレットさんって商人がいた。
この人も騙されて町から逃げてきたのだ。
この町に戻ってくるときに気になったのは、ぼくたちが逃亡奴隷になっていないかってことだった。
逃亡奴隷は罪人だ。
もし、衛兵につかまったら罪に問われる。
その話をグリフレッドさんに言ったら、それは大丈夫ってことだった。
町では法というものがあり、法を破らない限りは罪に問われない。
法を破らないということが正義というわけではない。
法律には穴があるのだ。法律がすべてを網羅しているわけではない。
現実にそれは不可能だっていうのだ。
つまり、法律が想定していないケースもあるということだ。
それに悪法も法なりといって、法に規定のあるかぎり、良くない行いも守られるということになる。
ぼくたちの場合。だまされて奴隷になったんだけど、契約書がある限りその身分は覆すことができない。
つまり、契約書と腕輪がある限りぼくたちは奴隷として扱われる。
ということは、契約書がないかぎりぼくたちは奴隷とされないということになる。
もちろん、ぼくたちが不正な手段で契約書を破棄した場合は訴えることによって、奴隷に落とされることはありうる。
ただ、その立証責任は暁の虎にある。
彼らには契約書を破棄する方法を証明することはできないのだ。
だから、ぼくたちは守られるのだ。
「それは、おまえらが破壊したんだろ」
「契約書が破棄できるわけなんてありません。
できるなら、やってみてください」
ぼくはそう言ってクレイブを睨み返すのだった。