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それとさっきDランクとか言ってたな。
ぼくたちが騙されたときはCランクだったはず。
もしかして降格されたのか。
クランも冒険者もクエストの失敗やギルドのルールを守らなかったりすると降格されることがあるのだ。
素行の悪いクランだからなんかやらかしたのだろう。
「どうしよう」
3人は顔を近づけて相談する。
彼らの表情はあのときの僕とミリアと同じ。
全員が顔見知りの田舎と違って町では悪意を持った人がいるのだ。
そんなことかけらも思っていない。
もう彼らの胸の中は決まっている。
暁の虎に鍛えてもらって、さっき冒険者試験でバカにしたやつらを見返してやる。
そんな風に思っているんだろう。
そろそろ助けてやらないとな。
契約をしてからでは遅い。
ドラなら腕輪や契約書を破壊することができるのだけど。
ぼくとミリアはまだそこまでのことはできない。
3人のところにクレイブとジェシカが行く。
変わっていないな。
ゴーディもいる。
片手が義手になってる。
やつらは、3人をリクルートする。
冒険者が楽で儲かる仕事であること。
異性にモテる職業であること。
適当なことを若者たちに吹き込む。
もちろん全部嘘。
たしかに一握りのS級冒険者は豪邸に住み、豪華な生活ができる。
ただそれは1万人に一人とかそういう確率。
逆に大半の冒険者は食うのがやっとなのだ。
そろそろ止めてやったほうがいいだろう。
ぼくが立ち上がる前にミリアが立ち上がる。
そして振り返ってクレイブのほうへ歩いていく。
ぼくはそのあとに付き添う。
「あなたたち、騙されたら駄目よ!」
ミリアは我慢できなくなって、叫ぶ。
子供のころから面倒見のいいタイプだった。
女の子だから村に残るという選択肢もあったはずだった。
どこかの長男の嫁になればいいんだから。
村でもかわいいほうだったし。
それなのに、ぼくについてくることを選んだ。
みんなも止めたけど、聞かなかった。
アッシュが心配だからって。
ぼくのことを弟のように思ってたんだな。
そして、クレイブたちに騙されてしまった。
もう自分たちみたいな目にあう若者をだしたくないんだろう。