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まず、魔王に会わなくてはならないのだろうな。
友好的な人であればいいんんだけど。
ぼくたちは別に人間の世界に未練はない。
村ではじゃまものにされて、町にきたら騙されて奴隷にされて。
だから、魔族とか言っても戦おうとは思わない。
もし、生きられるなら仲間に入れてもらってもいい。
こんな猫ちゃんを部下にもっているのっだ。
悪い人、いや魔族ではないはず。
猫ちゃんは、通りを右に曲がる。
もしかして、猫ちゃんのおうちに寄るのかな。
狭い路地を抜けた小さな家、そこに猫ちゃんは入っていく。
やっぱりそうなんだ。
魔王様って魔族の王、そんなに簡単に会えるわけないか。
「入るにゃん」
「おじゃまします」
猫ちゃんについて家の中に入る。
小さいけど、きれいな家。
なんかみたことのない家具もたくさんある。
小型のゴーレムが迎えてくれる。
猫ちゃんに掃除とかできるわけないから、ゴーレムが家事をやっているのか。
でも、ゴーレムってどうやって動かしているのだろう。
生きているのか。
普通ゴーレムっていうのは、魔術師が魔法で動かしている。
だから、簡単な動きしかできないのだ。
ところが、この町のゴーレムは人間のような動きをする。
そういえば、昔の人はゴーレムを使っていたという話を聞いたことがある。
古代人は自動で動くゴーレムを使役し、空を飛ぶこともできたといわれる。
それ以外にもいろいろなテクノロジーを駆使していたと伝えられる。
その片鱗が遺跡に残されていると言われる、
そしてその古代文明が栄えたのが、この深淵の森。
その文明は突然滅び、その遺跡を深い森で覆ったって伝説がある。
まあ、一種のおとぎ話と思っていたけど目の前にあるのがそうかもしれない。
キッチンも小さくまとまっている。
村では土間になっていて、家の半分くらいのスペースをとっている。
それなのに、一部屋だけですんでいる。
だから、こんな小さな家でいいのかもしれない。
それに、家は二階建てになっている。
村では2階建てになっているのは倉庫と村長の家くらいだ。
ここではほとんどの家が2階建てだ。
表通りには5階建てとかもざらにあった。
「好きにしてくれたらいいにゃん」
猫ちゃんはふわふわの毛布がかかったソファーに上ってまるくなる。
ぼくとミリアもふかふかのソファーに腰をかけるのだった。