13
「ジェシカ、魔法だ。
だが、殺すな。
あいつのところに行かせてはいけない」
「わかったわ」
クレイブがジェシカに命令する。
ジェシカは炎の玉を撃つ。
急にだし、詠唱時間もない。
だから、軽い魔法、でもスピードは速い。
こいつもC級の魔法使いだ。
それなりの魔法の術を持っている。
「ニャン」
猫ちゃんが空中に猫ぱんちをする。
その動作に合わせて、炎球は叩き落とされる。
「アッシュ」
「ミリア」
ミリアがぼくの胸に飛び込む。
「いてえよ。腕から血が」
ゴーディの腕から大量の血が流れている。
「な、ミリアを離しただろ?
俺たちを見逃してくれよ」
「わたしはこいつらと違ってあんたらをイジメたりしなかったよね」
命乞いをする3人。
こいつらは約束を守らなかった。
だから、いうことを聞く必要はない。
しかし、ミリアを離したら助けるという約束はした。
だから、ぼくはそれを守る。
ぼくはこいつらと違うんだ。
「失せろ!」
ぼくはそう叫ぶ。
やつらは最低限の荷物を拾って逃げていく。
もちろんゴーディを置いてだ。
やつらの絆なんて信用できるものではない。
そして、ゴーディも腕を抑えながら逃げていく。
ぼくとミリアはそれを見送る。
それから、猫ちゃんに目をやる。
猫ちゃんは目を細めて、ぼくたちを見る。
なんか、それでいいんだよって言ってるみたいだった。
そう猫って、すべてを肯定してくれるようなところがある。
さあ、これからどうしよう。
やつらのあとを追いかけたくない。
やつらのほうが冒険者としては上。
キャンプではぼくたちは犯罪者として報告されるだろう。
でも、なんとかなるか。
ぼくは村を出てから初めて希望を取り戻したような気持ちになった。
すべて、この猫ちゃんのおかげだった。