12
崩れていく契約書はぼくのだけではない。
ミリアのも同じ。
猫ちゃんは撫でて撫でてというように、ぼくのところに来る。
ぼくは猫の頭を撫でる。
そう猫はここ以外撫でてはいけない。
他はいやがる猫がいるのだ。
「ミリア。こっちだ」
ぼくは、そのあとミリアを助けるため、前に出る。
ぼくとミリアは手を伸ばす。
その手が触れ合わないうちに、ミリアがゴーディに捕まる。
「ガハハ、捕まえたぞ。
こいつを殺されたくなかったら、大人しく剣を下せ」
人質か、卑怯なやつだ。
でも、言うことを聞くしかない。
ぼくは剣を下す。
「ミリアを離せ!」
「離したら俺らを殺すだろう」
「そうだな。自分たちのやってきたことをわかっているみたいだな」
「では、安全なところに逃げ切れるまでは離せないな」
ぼくは奴らを睨みつける。
それだけで、クレイブは怯む。
怯えたような目、こいつらは弱い者にしか偉そうにできないのだ。
「ミリアを離してくれたら、おまえらを追いかけないと誓おう」
そう、ぼくのこの力は猫ちゃんがくれたものだ。
いつまで使えるかわからない。
それに猫ちゃんの考えていることもわからない。
だから、この場はミリアを取り返せたらそれでいい。
はったりが効いているうちに交渉を終えよう。
「そんなこと信用できるか!」
人間は自分を基準に人をはかる。
こいつら下衆なやつらは、絶対に他人を信用できない。
自分なら裏切るだろう状況でぼくの言うことを信じられない。
こうなってみるとかわいそうなやつらだ。
でもこういうときのバカは何をするかわからない。
慎重にいかないと。
「アッシュ」
ミリアはその隙をみてこっちにこようとする。
だめだ。まだ。
そのミリアの首にゴーディの腕が食い込む。
「逃がさねえぜ」
そう、ミリアはやつらの命綱だ。
そんな簡単に逃がすわけはない。
「ニャー」
ぼくの横で猫ちゃんが鳴く。
そのとたん、ゴーディの腕は切断されておちる。
声もでないゴーディのところから、ミリアがこっちに駆けだすのだった。




