10
「何をしている!
おれたちを裏切るのか。
あとで、きついお灸をすえてやる」
ケリーはぼくを突き飛ばして、猫ちゃんのほうに向かおうとする。
そのケリーの手を掴んで止める。
えっ?普通ならいくら戦士といってもケリーに敵わない。
そう、やつはC級、ぼくは見習いなのだ。
秘密で鍛えていたといっても、そんな簡単に差は埋まらない。
まず、盗賊の速度、それについていけないはず。
でも、ケリーさんの動きはちゃんと見えている。
どういうこと。
そういえば、さっき猫ちゃんを撫でたとき、何か身体の中に力がみなぎるのを感じた。
「おまえ、何をした?」
「いえ、別に…」
こっちがききたいくらいだ。
「ゴーディ、クレイブ起きろ!」
ケリーは残りのメンバーを起こす。
「なんだよ。まだ交代に早いだろ」
「アッシュがへまでもしたのか」
2人は目をこすりながら起き上がる。
「なにしてんだよ」
ジェシカとミリアも起きる。
「魔法猫か。
ケリーだけでだいじょうぶだろう。
アッシュじゃ荷が重いがな。
こいつは魔法を使うからな」
「いや、アッシュだ。
こいつなんかおかしい」
「なんだって、いつものアッシュだろう」
そう言って、ゴーディは殴りかかる。
ぼくはそれを避ける。
えっ?なんかゴーディの動きがスローモーションだ。
「こいつ。契約書を出せ、腕を壊してしまえ」
クレイブは剣を抜く。
「わかったわ」
ジェシカは契約書を探す。
なんか、ぼくが逆らうなんて思っていなかったみたいで、探すのに苦労している。
その間に、クレイブ斬りかかってくる。
こいつの剣技はやばい。
C級だけど、ほとんどB級の力がある。
その素行の悪さが昇級を拒んでいる。
たぶん、手加減した剣。
奴隷を殺すのはもったいないと思ったんだろう。
その剣をぼくも剣を抜いて受け止めた。