09
ニャー。
声もかわいい。
ぼくは猫吸いをする。
なんか、すごい元気がでる。
この猫ちゃん、こんな森に住んでいるのだから、本当にすごい力があるのかも。
さっき食べた兎も草原にいるのより速くて強かったし。
「なんだ、なにかあったか?」
ケリーが寝たまま話しかけてくる。
さすがに目ざとい。
若くみえるけど40歳は超えているだろう。
そこまで生きてきたということはそれなりの修羅場を踏んでいる。
職業は盗賊で、暁の虎の頭脳と言ってもいい。
用心深い男だ。
今も猫の小さな声で目を覚ましたのだ。
「猫です。
たいしたことありません」
「猫だと、こんなところにか」
「はい、それも子猫です」
「こんなところで猫が生きられるはずがない。
まて、ここに出現するとなると…
尻尾が2本あるか」
「はい。しっぽは二本に別れています」
「それは魔法猫だ。
捕まえろ。その皮は高く売れる」
えっ、この子を捕まえるって?
皮を売るだって?
猫ちゃんにそんなことできるわけない。
「逃げろ!」
ぼくは小さな声で猫ちゃんに言う。
でも、逃げない。
だめだ。猫ちゃん殺されてしまう。
「何をしている。早く捕まえろ!」
しかたない。
殴られるのは慣れている。
「猫を殺すなんてできないです」
「何を言ってる。
魔法猫は立派な魔獣だ。
それも強いのになるとD級くらいある」
でも、目の前の猫チャンは子猫、そうは見えない。
自分で捕まえようとするケリーの前にぼくは立ちふさがった。