03
「よく来てくれたな。
暁の虎のリーダー、クレイブだ」
クレイブさんは右手を差し出す。
すごく大きな手だ。
それに身体も大きい。
人間というよりゴリラだ。
でも、教官もそんな身体をしていた。
戦士はこんな感じになるのだろう。
それにクレイブさんを大きくみせているのは、そのオーラみたいなものだ。
たぶん、背なんてぼくとあまり変わらないはずだ。
ぼくも右手をだして握手をする。
「アッシュです。トライアの村から来ました」
「そうか。南のほうだったな。
一度近くを通ったことがある」
「えっ、知っておられるんですか？」
「ああ、冒険者は地理に強くないとな。
世界を旅する職業だからな。
なかなかいいところだよな」
「いえ、すごく田舎で。
生活するのが大変なところです」
「そうか。俺も田舎の出身だから、そういうの懐かしいな。
でも、田舎じゃ喰えないからな。
俺も、それで村をでてきたんだ」
そうなんだ。
ぼくはクレイブさんに親近感を覚える。
でも、あとでわかったことなんだけど、それは全部嘘。
クレイブさんは、都会のスラム出身。
生きるために相当悪いこともしてきたみたいだ。
この時の僕はそんなこと全然疑っていなかった。
クレイブさんたちがすごくいい人たちだって信じて疑わなかった。
「こっちの子はミリアちゃんだね。
かわいいじゃん。
こんな妹欲しかったんだよね」
向こうでは大人の女の人って感じのかっこいい女性。
暁の虎の魔法使いジェシカさんがミリアに話しかけている。
ミリアも嬉しそうにジェシカさんと打ち解けている。
「では、新しい冒険者仲間に乾杯しよう」
クレイブさんの言葉にみんなグラスを掲げる
ぼくたちを祝福するように。
ぼくとミリアもグラスを掲げる。
クレイブさんの乾杯の合図でぼくたちはグラスをぶつけ合うのだった。
