表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世は拾われた猫だったので転生したら人間を拾っています  作者: PYON
第2章 S級冒険者炎王アッシュ
25/187

01

「約束が違います!」

 ぼくは、ゴーディにつかみかかる。

 

「うっせえな」

 ゴーディはぼくの腹にパンチをくらわす。


「げぇ」

 ぼくはその場で崩れ、腹の痛みにのたうつ。


「おまえは、俺たちの奴隷なんだよ」

 そう言ってゴーディはぼくに唾をはきかける。

 この海坊主は、C級冒険者クラン暁の虎のアタッカーだ。

 ぼくのような駆け出し冒険者が敵うわけがない。

 どうしてこんなことになったんだろう。


 ぼくは田舎から冒険者になるために出てきた。

 身体能力も高いほうなので、村では剣使いが上手いほうだった。

 しかし、貧乏な村に生まれたぼくたちは15歳になると長男を除いて家を出ていかなければならない。

 ほとんどの仲間は豪農や商人、工房に出稼ぎにでる。

 でも、そんなことをしても村に戻ってくることはできず、村はいつまでたっても裕福にはならない。

 

 それでぼくが選んだのが、冒険者になることだった。

 S級冒険者にでもなれば、とんでもない収入を得ることができる。

 小さな村ならいくつでも救うことができる。

 もちろんS級冒険者になれるなんて一握りの者だけだ。

 でも、あの時のぼくはそれができると思っていた。

 ぼくは村の誰よりも速かったし強かったんだ。

 ぼくはミリアと一緒に、大きな夢を抱いてこの町にやってきた。

 

 でも、それは冒険者ギルドの試験で、粉々に打ち破られた。

 ぼくは誰よりも弱かったし、教官相手になにもすることができなかった。

 はじめて剣が怖い、戦うのが怖いと思った。

 それでも、なんとか冒険者になることができた。

 ミリアも同じ。

 村では一番の魔法使いだったのに、ここでは平均以下の魔法しか使えなかった。

 ぼくたちは井の中の蛙だった。


 ただ、まだぼくたちの考えは甘かったんだ。

 ぼくは自分のことを主人公だと思ってた。

 自分がモブに過ぎないということがわかっていなかった。

 本来なら地味なクエストをこなして、実力をつけていかなければならなかった。

 そうすれば平凡な冒険者になれたのだろう。

 でも、ぼくは自分を漫画や小説の主人公のように思っていた。

 これから才能を見出して、二つ名を持つような冒険者になれるんだって。

 そこにつけこむような輩がいるとは知らずに。


 酒場でぼくはミリアとこれからのことを話していた。

 とにかく、働かなければ明日の宿賃すらない。

 

「きみたちは新人冒険者だね」

 後ろからかけられた声にぼくたちは振り向いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ