19
「王よ。これからどうするのか?
我らと一緒にこの森を守るか?
最近森の入り口あたりで、人間がうろちょろしているらしいし、そのうちなんとかしないとならない。
奴らは数が多いのでめんどくさいのだ」
竜がぼくに語りかける。
「王じゃなくてドラだにゃん。
ドラはもっと強くなるんだにゃん」
そう、何者からでも守れる強さを手に入れるんだ。
「しかし、この森にはドラより強いものはいない」
「じゃあ、おうちを探すニャン」
そう、家猫にはおうちが必要なのだ。
屋根があって、壁があって、箪笥があって。
こたつがあって、お布団があって。
やっぱおうちでゆっくりしたいのだ。
「王の家か?」
「普通のおうちだにゃん」
「それなら、いいところがある。
昔の町の遺跡だ。
もっと森の入り口のほうにあるんだが、不思議なところだ。
わたしも一度しか行ったことはないのだが、めったと姿をみせることはない。
古代の不思議な結界がはってあって、魔力の弱いものには見えないのだ。
それに入ろうとすると石のゴーレムがその道をはばむ。
わたしは、そこで引き返した。
そいつらと戦う理由がないからな。
たぶん、宝を守っているのだろう。
わたしたちにはそんなもの必要ないのだ」
「ぼくも宝なんて必要ないにゃん」
「しかし、家というとそれくらいしかない」
「わかったにゃん。
行ってみるにゃん」
まあ、他にやることもないし、行ってみよう。
ゴーレムが守っている町だ。
もしかして、守らなければならないものがみつかるかもしれない。
それに、他にやることはないのだ。
「では、わたしが案内しよう。
他のものでは町を見つけることはできないだろう。
ドラよ。わたしに乗れ」
「わかったにゃん」
ぼくは竜王の背中に登る。
竜王はそれを確認すると、羽ばたき空高くあがっていった。