18
ぼくと竜王の戦いは3日目に入っていた。
どちらも決め手に欠くまま、相手に攻撃をする。
そして、それは防御される。
どっちも無事ではない。
竜王は鱗がボロボロになっているし、ぼくは毛並みがボワボワになっている。
やはり、戦いの最中はグルーミングもできないし、食事もできない。
猫って気まぐれで、長期戦は苦手なイメージかもしれない。
でも、違うんだ。
猫はすごく辛抱強いんだよ。
トラやライオンは獲物を追いかけて捕まえる。
でも、猫は徹底的に待ち伏せをする。
なんでかっていうと、その方が確率がいいから。
狩りの成功率は猫のほうがいいんだ。
じっと息を潜めて何日でも待つ。
この忍耐強さが猫の武器なんだ。
竜王も辛抱強いけど、これだけの巨体を維持するには相当のエネルギーがいる。
それが切れるのを待つのがぼくのやり方だ。
相手の回復の隙を与えない。
もちろん相手もそう、ぼくをゆっくりはさせないのだ。
でも、そろそろ相手の攻撃も緩慢になっている。
もう少しの辛抱だ。
そう思った時、竜王はぼくに語りかける。
「小さき強者よ。
我の負けだ。
負けを認めよう」
ぼくは竜王を見上げる。
嘘じゃないみたいだ。
まあ、戦いを通じて竜王のことはわかっているのだけどね。
竜王は誇り高く勇敢な竜なのだ。
攻撃も真向からのもので、騙し打ちはない。
それをぼくは真向から受け止めた。
ぼくたちは攻撃を通じてお話をしていたのだ。
それで、ぼくたちは相手のことがわかった。
「わかったにゃん」
ぼくは竜王の言葉に同意する。
「友よ。我をどうしてくれてもいい。
ただ、竜の里は助けてくれ」
そう、ぼくは何かを守れたらいい。
だから、竜を滅する気なんかまったくない。
「じゃあ、友達になるにゃん」
「そうか、それはありがたい。
それでは、ドラ様は今日からこの森の王だ。
わたしがそれを保証しよう」
そう言って、ぼくの前に頭を下す。
ぼくがその上に飛び乗ると、竜王は頭を持ち上げる。
高く高く。
そして、頭をあげると、すべての竜が頭を地につける。
ぼくはこの森の王になったのだった。