エピローグ01
「ブラックウッドさん、古文書が解読できました」
考古学者ショーウェルが一冊の本を持ってブラックウッドの部屋に入ってくる。
「おお、そうか」
「これは、古代人の日記でした。
古代技術の秘密もここに記されています」
「それはすごい。
それこそ、わしの求めるものじゃ」
「それから、ここにはこの町の秘密が書かれてました」
「この町の秘密じゃと?」
「そう、なぜこんなところにこの町をつくったのか?」
「どういうことじゃ」
「古代人は宇宙からやってきたみたいです。
飛行船が故障して、この星に不時着したのです。
彼らが生きられる星を探してなんとかたどり着いたみたいです。
その人数は2人。
そして、この星の資源、その人数では故郷にもどることはできなかった。
もちろん、かれらは同性で繁殖もできなかった」
「それなら、こんな町を作るひつようはなかったのではないか。
もしかして、原住民を支配してここで王として暮らそうとしたのか。
それなら、なぜこんな森の奥に」
「はい、その謎はこの本に書かれています。
その部分を読ませてもらいますね」
「たのむ」
「我々は、故郷に戻ることをあきらめることとした。
この星の資源、そして2人という人数では、光より速く航行するエンジンを作り出すことはできないという結論に至ったのだ。
我々は、もう歳をとりすぎた。
あと10年も生きられないだろう。
ここで、安らかに老後をすごそう。
釣りをしたり、本を読んだり、畑を耕したり。
しかし、ひとつ心残りがある。
それは、宇宙旅行のさみしさを癒すためにつれてきた猫ちゃんのことだ。
我々が死んだあとも、この子たちは生き続け子供を増やしていくだろう。
だが、この子たちは家猫だ。
自分たちだけで生きていくことはできないだろう。
だから、猫ちゃんをお世話するシステムを作ることにした。
幸いこの世界には魔力がある。
特にこの森のこの場所の地下には、無尽蔵の魔石油が埋蔵されている。
この場所に猫ちゃんの家を作ろう。
そして、魔石油を使ってAIロボットに世話をさせよう。
これで、猫ちゃんも幸せに生きていけるだろう。
猫ちゃんの家は大きなものがいいな。
すこしぐらい増えても大丈夫なようにな」
「もしかして、この町は…」
「ええ、そのとおりです」
「猫ちゃんをお世話するシステムやったんか~い!
家じゃなくて町やろが~い!」
そう、人間は猫のために過剰なくらいのものを用意する。
狭い部屋に似つかわしくない大きなキャットタワー。
いろいろな種類の猫じゃらし、猫のおもちゃ。
これは古代人も同じなのだろう。
「そして、最後にこんなことも書いてあります」
「どんなことだ」
「猫ちゃんが逃げた。
探してもどこにもいない…
人工衛星のないこの星ではGPSも使えない。
猫ちゃん帰ってきて…」
「逃げたんか~い!」
ブラックウッドは絶叫芸人のような大きな声でつっこむのだった。




