炎王アッシュ05
うん、まあ、ランスロットさんが来るまでに悪魔の一人でも倒せたらいいけど。
ぼくってそんなに強くないからな。
足手まといにならないかな。
もし、つかまったりしたら、ランスロットさんの迷惑になってしまうし。
「わたしがやろうか?」
ミリアが杖を掲げる。
いや、ミリアの戦い方は派手すぎる。
他の悪魔まで呼び寄せたら、ぼくたち駆け出し冒険者では勝てない。
「ぼくがやるよ」
ぼくは剣を構える。
それに対しサムも両手の剣を交差させる。
普通のロングソードが短剣にみえるくらいの背の高さ。
ぼくの倍くらいの身長に思える。
まさに大人と子供って感じだ。
「さて、遊んでやろう」
そう言って、剣を振り回してくる。
長い腕で軽々とソードを扱う。
でも、剣士って感じじゃないな。
ランスロットさんに習った剣技とは全然違う。
これは流派的なものではない。
動きに無駄がありすぎなのだ。
たぶん、言葉どおり遊んでいるんだろう。
この悪魔は殺し屋。いやサイコパス。
殺しを楽しんでいるのだ。
ぼくたちの力を見切って、遊びながら切り刻もうというのだ。
やばいな。
ぼくたちの力で悪魔なんて倒せるわけないし。
「なにやってんの。アッシュ。
こんな秒で倒せるでしょ。
どう見ても隙だらけじゃない」
そう、隙だらけなのだ。
それがやばい。
上位の悪魔たるものが、すぐに倒せそうな見た目をしている。
たぶん、ぼくたちに希望をもたせて打ち砕こうと思っているのだ。
でも、このまま受け続けるわけにもいかない。
とにかく、少しでもこいつに痛手をあたえられればいい。
ぼくのすべての力をぶつけるんだ。
一度離れて、剣に炎をまとわせる。
とにかく、初撃にすべてを賭けよう。
こいつはぼくのことを舐めている。
今しかチャンスはない。
ぼくは、剣を上段から振り下ろす。
ぼくの剣から炎の竜がサムに向かって飛んでいくのだった。