イグレーヌ15
「姫、あの人は本物のブラックウッドです。
昔、一度ランドバルクに来られたことがあるんです。
その時に会ったのです。
お年は召されていますが、間違いないです」
家を出たとたんエヴァンスがわたしにささやく。
「でも、ロラン王国の魔導士長がなぜこんなところにいるんです?
たぶん、そっくりさんではありませんか」
わたしはそう答える。
いくら年をとっても、ロラン王国が最強戦力を手放すわけはない。
「俺もあのじいさんは本物だと思うぜ。
ずっとみていたんだけど、隙がないっていうか」
ランスロットもエヴァンスと同じ意見だ。
ランスロットは野生の勘みたいなもので、相手の強さをかぎ分けるのだ。
ぼけ老人だって思っていたけど、なんかすごい人のような気がしてきた。
もし、ブラックウッドさんに力を借りられるなら、すごい戦力になる。
「それから、あのアッシュもやばいぜ。
子供だがあの身のこなし。
それに俺にない魔法の資質がある。
剣に炎をまとわせることができるんだ。
もし、俺が剣技を教えたらとんでもない強さになる」
「あのミリアって子もすごい魔法力です。
ここに住んでる人って、すごい人ばっかりですね」
エヴァンスもミリアちゃんを評する。
あの猫ちゃんといい。
この町の魔導技術といい。
ここはいったい。
とにかく、ここにこれたのはラッキーだったのかも。
わたしたちもここで修行をしよう。
ランスロットはもっと強く。
エヴァンスはもっと守れるように。
わたしもブラックウッドさんに魔導を学んでみよう。
「きょうは歓迎会です」
ミリアちゃんが呼びにくる。
ミリアちゃんの家にいくと、すごい料理が並んでいる。
魔獣や鳥、魚料理。
野菜も豊富だ。
魔獣はミリアちゃんたちがとってくるのだけど、冷凍庫っていうのがあって腐らずに保存できるみたいだ。
野菜はゴーレムが工場で作っているらしい。
それから、料理はミリアちゃんが作ったっていう。
この腕はプロの料理人の味だ。
コンロが言う通りに作るとうまくできるらしい。
わたしたちは、久しぶりにゆっくりと夕食を楽しむ。
そして、翌日から悪魔を倒すための修行が始まるのだった。