13
カラスの親玉はぼくの下で死んでいる。
まわりには、たくさんのカラスが死んでいる。
それとおかあさんやおにいちゃん、おねえちゃん。
ぼくは、みんなのところに言って、息をしていないか確かめる。
でも、みんな死んでるみたい。
ひとりぼっちになっちゃったな。
前の世界でも、同じだったな。
結局ぼくだけ助かったんだ。
この世界でも同じだ。
でも、前の世界ではひとりぼっちになったとたん、新しい家族ができた。
今はちがう。
本当にひとりぼっちになってしまったんだ。
ぼくは、穴を掘って家族を埋める。
このまま置いといたら、鳥とか鼠とかに食べられてしまう。
それも自然の摂理、だけどそういうのってあんまりみたくない。
今のぼくには穴を掘るなんて簡単だった。
何回か爪で地面を掻くだけでみんなが入る穴が完成した。
本当にこの力ってなんなんだろう。
最初、ぐるぐるを感じて身体の中が熱くなった。
それで、力が湧いてくる感じ。
それと、カラスをたくさん倒したら、もっと力が出るようになった。
最後に大ガラスを倒したとき、すごく力が上がるような感じだった。
たぶん、戦えば戦うほど、強くなっているみたいだ。
ぼくは家族のお墓に誓う。
絶対に強くなる。
そして、大事な者を守れるようになる。
それがなにもできなかったぼくの使命だ。
ぼくは大カラスを食べる。
カラスたちも生きるために戦ったんだ。
だから敬意をこめて自分の身体に取り込む。
これも自然の掟だ。
ぼくは、それから一人で生きることになった。
でも別に食べ物に困ることはなかった。
ぼくは強くなったんだから。
兎や鼠や鳥を捕まえそこなうことはなくなった。
それと、もう、ぼくの縄張りを荒らすものはなくなった。
ここで生きる分には、何も心配することはなくなった。
ぼくは、寝て食べて遊んでの暮らしをした。
でも、気が付いた。ここままじゃだめなんだ。
ぼくは何かを守れるようにならなければならないんだ。
ぼくはもっと強くなることにした。
そして、ぼくは縄張りを離れて、森の奥のほうに入っていくのだった。