02
「イグレーヌ姫を逃がしただと!」
王座にすわった青年が声を荒げる。
彼がブラッドリー王、ランドバルク王国の国王だ。
1か月前に急逝した前王をついで玉座に座っている。
「ランスロットが右腕を落として、隙を作り姫を救ってにげたのです。
黒騎士の隊長がやられました」
黒騎士の一人が報告をする。
「この役立たずどもが。
それで、やつらはどこに向かった」
「深淵の森に入っていきました。
あそこに迷い込んだら戻ってこれないでしょう」
「やつらが、迷って森の中で死んでくれる…か。
ばかもん!そんなことあてにできるか!
やつらにおびえながら過ごせっていうのか?」
黒騎士のところにテーブルの上の食器をなげる王。
皿は黒騎士に当たって、床に落ち割れる。
「まあまあ、ブラッドリー王」
5人の道化師が王をなだめる。
太った男、小さな男、ひょろっとした背の高い男、妖艶な女、普通体形の男。
その中の太った男が王に話しかける。
「だいじょうぶですよ。
王には我々5本指の悪魔がついているんですから。
剣王ランスロット、たしかにやっかいな男です。
しかし、しょせん人間です。
我々悪魔に勝てるわけはありません。
それに、利き腕をなくしていると聞きます。
簡単なことです。
我々が姫を殺して差し上げましょう」
太った男は胸をたたく。
「それでは、ピーター。
お願いします」
「わかった。
おいらが殺してくるよ」
いちばんのちびが前に出る。
まるで10歳くらいの子供の身長だ。
ゴブリンくらいの大きさ。
緑色の服に緑の三角帽子。
「子供一人で大丈夫か?」
騎士の一人が心配そうに言う。
「大丈夫だよ。
3人くらい」
ピーターはそう言うと、騎士とすれ違う。
そのとたん、騎士の首がごとりと床に落ちるのだった。