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もちろん、モーガンもバカではない。
あらゆる手を使ってじゃまをしようとした。
チンピラはボディガードに簡単にいなされる。
ハミルトン伯爵に騎士団を動かしてもらおうとするが、王にコネクションのあるウェーバーにはなにもできない。
逆にハミルトン伯爵に叱られるということになってしまう。
そうなるとモーガンなんて雑魚にすぎなかった。
いきなり開店セールを始めるウェーバー商会を指をくわえてみているしかなくなった。
ウェーバーは大量の品物を店頭に並べた。
それだけでなく、この町の農家や漁師、職人から商品を仕入れた。
それも正規の価格で。
モーガンは仕入れ先からかなり買いたたいていたため、人々は喜んでウェーバーに乗り換えた。
その上、モーガン商会の従業員の引き抜きも始めた。
キーマンと言われる従業員に声をかけたのだ。
もちろんこっちも安月給で使われていたんだから、みんな手のひらを返した。
もう、3日くらいでモーガン商会は売る品物も店員もなくなったのだ。
普通なら、それでもいままでの資産のあるモーガンは反撃の機会をうかがうことができるはず。
それなのに、町にはモーガン商会はやばいという噂が流れた。
これまでなら、そんな噂はなんの意味もなかったのだが、店頭に品物もなく、開店休業となっているモーガン商会の店頭を見るとその噂も信憑性のあるものとなってしまう。
モーガン商会が仕入れ先に手形で支払いを行っていた。
それが、一斉に取り立てに出されたのだ。
それから、やめた従業員の給料、日常経費の支払い、伯爵や親分さんへの付け届け。
急に多額の現金が必要となったのだ。
しかし、換金できる資産は限られている。
手広く商売をするほど、現金はつぎの商売に回されているのだ。
ついにモーガン商会は不渡りをだした。
モーガン商会の店頭には取り立ての債権者が押しかけた。
もちろん、モーガンの自宅にも。
普段使っていたギャングも自分を脅すようになる。
そのうえ、伯爵の資産運用も請け負っていたため、騎士団にも追われるようになったのだ。
モーガンは完全に雲隠れしてしまった。
そのモーガンをわたしが町に連れ戻したのだ。
しかし、そんなことはどうでもいい。
大切なのはこれからの商売のことだ。
今回持ってきた商品もわくわくするものばかりだ。
この商品でお客様の喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。
この店のレイアウトも考えないとならない。
すべてレイモンドさんに任せるわけにはいかないからね。
本当ならレイモンドさんが代表になったほうがいいのだろう。
でも、レイモンドさんは辞退する。
わたしは支配人っていうのがいちばん似合っているんですとか言って。
とにかく、やることはたくさんある。
わたしは馬車に戻り、子供たちに指示をする。
子供たちは、てきぱきと荷物を運び込む。
店にいる子供たちや女の人が増えている。
もしかして、レイモンドさんが雇ってくれたのかな。
わたしはモーガンのことも忘れ、仕事に没頭するのだった。